車は経費になるか|購入・リース・自家用との按分(高知の中小企業向け)

2026/11/05 税務

「車を買えば、節税になりますよ」

高知市の事務所でも、この話はよく出ます。

年末が近づくと、よく聞く話です。

結論から言うと、事業で使う分は経費になりますが、買った年に全額が落ちるわけではありません。そして私生活でも乗るなら、その割合は経費になりません。

車は金額が大きいぶん、間違えたときの影響も大きい支出です。購入・リース・按分の3点を整理します。

事業で使う割合を、どう決めるか

車を仕事とプライベートの両方で使っている場合、事業割合だけが経費になります。

分け方向いている人
走行距離の割合営業で遠方に行く、距離に差がある
使用日数の割合平日は仕事、週末は私用
使用時間の割合1日のうち一部だけ使う

いちばん説明しやすいのは走行距離です。年間走行距離のうち、業務の走行がどれだけかを出します。

日数で出す場合は、「平日5日のうち4日は業務で使用」なら4÷7で約57%、といった形になります。

自動車の場合、運行記録(いつ・どこへ・何キロ)を残しておくと強いです。手帳やカレンダーに訪問先を書いているなら、それが証拠になります。

経費になるのは、車両本体だけではない

按分の対象になるものを並べます。

  • 車両の減価償却費
  • ガソリン代
  • 自動車保険料(任意・自賠責)
  • 自動車税・重量税
  • 車検・点検・修理代
  • タイヤ、オイル交換
  • 駐車場代、高速道路代、コインパーキング代
  • ETCの利用料、洗車代

高速代やコインパーキングは、業務で使った分は100%経費にできます(按分ではなく、その都度の実費)。訪問先を記録しておけば問題ありません。

一方、車両本体やガソリン、保険は使い分けができないので、按分になります。

買った年に全額落ちるか

ここが、いちばん誤解されるところです。

車は10万円以上の資産なので、減価償却で何年かに分けて経費にします。

区分法定耐用年数
普通自動車(新車)6年
軽自動車(新車)4年
中古車経過年数に応じて短縮

中古車が有利と言われる理由

中古車は、残りの使用可能年数で計算します。計算式は次のとおりです。

(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20% ※1年未満切捨て、最短2年

6年落ちの普通車なら、(6−6)+6×0.2=1.2年 → 最短の2年になります。

4年落ちなら、(6−4)+4×0.2=2.8年 → 2年です。

2年の定率法であれば償却率は1.000なので、理屈のうえでは1年で全額を経費にできます。「4年落ちのベンツが節税になる」と言われるのは、これが理由です。

ただし、個人事業主には大きな注意点がある

法人と違い、個人事業主の減価償却は月割りです。

12月に買えば、その年に経費にできるのは12分の1だけ。1月に買った場合とは、12倍の差が出ます。

「年末に車を買って節税」は、個人事業主にはほとんど効きません。

もう1つ。個人事業主の減価償却は、原則として定額法です。定率法を使うには、あらかじめ届出が必要です。届出をしていなければ、2年で均等に割ることになります。

リースはどうか

リース料は、原則として支払った分を経費にできます(事業割合分)。

購入リース
経費になる時期何年かに分けて毎月の支払いごと
初期の支出大きい小さい
経理の手間減価償却の計算が要る支払いを入れるだけ
自由度売却・改造が自由契約の制約がある

ただし、所有権移転ファイナンス・リースに当たる契約は、売買と同じ扱いになり減価償却が必要です。契約書の形によって扱いが変わるので、リース契約を結ぶときは書類を確認してください。

総額で見ると、リースのほうが高くつくことが多いです。「経費になるから」ではなく、資金繰りと手間で選ぶのが正解です。

家族名義の車は経費になるか

名義が配偶者でも、実際に事業で使っていて、その費用を事業主が負担しているなら、経費にできる余地があります。

生計を一にする親族の資産を事業で使う場合、その資産にかかる費用は事業主の経費にできる、という考え方です。

ただし、家族に「使用料」を払っても経費にはなりません(生計を一にする親族への支払いは経費にならないルールがあるため)。経費にできるのは、ガソリン代や保険料など、実際に出ていく費用の事業割合分です。

売ったときの扱いを忘れない

事業用の車を売ったときは、注意が必要です。

個人事業主の場合、事業用の車の売却は譲渡所得になります。事業所得ではありません。

帳簿価額より高く売れれば利益、安ければ損失。譲渡所得には50万円の特別控除があるので、結果的に税金が出ないことも多いですが、申告書には書く必要があります。

「売った代金を売上に入れていた」という間違いは、よく見かけます。

車を買う前に確認する3つ

  1. 事業で使う割合は何%か(その根拠を説明できるか)
  2. 買うのは何月か(個人事業主は月割り。年末は効果が薄い)
  3. その車がなければ、売上は減るか

3番が「減らない」なら、それは節税ではなく、ただの支出です。税金を30万円減らすために300万円を使っては、手元の現金は減ります。

節税は、出ていくお金より減る税金のほうが小さいのが原則です。

おわりに

車は、個人事業主にとって必要な経費です。入れ忘れている人も多く、按分をきちんとすれば税額は下がります。

一方で、「節税のために買う」という判断は、ほとんどの場合、損になります。

必要だから買う。買ったものは、根拠をもって按分する。この順番を守ってください。

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※本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。個別の判断は、必ず専門家にご確認ください。

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