車は経費になるか|購入・リース・自家用との按分(高知の中小企業向け)
「車を買えば、節税になりますよ」
高知市の事務所でも、この話はよく出ます。
年末が近づくと、よく聞く話です。
結論から言うと、事業で使う分は経費になりますが、買った年に全額が落ちるわけではありません。そして私生活でも乗るなら、その割合は経費になりません。
車は金額が大きいぶん、間違えたときの影響も大きい支出です。購入・リース・按分の3点を整理します。
事業で使う割合を、どう決めるか
車を仕事とプライベートの両方で使っている場合、事業割合だけが経費になります。
| 分け方 | 向いている人 |
|---|---|
| 走行距離の割合 | 営業で遠方に行く、距離に差がある |
| 使用日数の割合 | 平日は仕事、週末は私用 |
| 使用時間の割合 | 1日のうち一部だけ使う |
いちばん説明しやすいのは走行距離です。年間走行距離のうち、業務の走行がどれだけかを出します。
日数で出す場合は、「平日5日のうち4日は業務で使用」なら4÷7で約57%、といった形になります。
自動車の場合、運行記録(いつ・どこへ・何キロ)を残しておくと強いです。手帳やカレンダーに訪問先を書いているなら、それが証拠になります。
経費になるのは、車両本体だけではない
按分の対象になるものを並べます。
- 車両の減価償却費
- ガソリン代
- 自動車保険料(任意・自賠責)
- 自動車税・重量税
- 車検・点検・修理代
- タイヤ、オイル交換
- 駐車場代、高速道路代、コインパーキング代
- ETCの利用料、洗車代
高速代やコインパーキングは、業務で使った分は100%経費にできます(按分ではなく、その都度の実費)。訪問先を記録しておけば問題ありません。
一方、車両本体やガソリン、保険は使い分けができないので、按分になります。
買った年に全額落ちるか
ここが、いちばん誤解されるところです。
車は10万円以上の資産なので、減価償却で何年かに分けて経費にします。
| 区分 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 普通自動車(新車) | 6年 |
| 軽自動車(新車) | 4年 |
| 中古車 | 経過年数に応じて短縮 |
中古車が有利と言われる理由
中古車は、残りの使用可能年数で計算します。計算式は次のとおりです。
(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20% ※1年未満切捨て、最短2年
6年落ちの普通車なら、(6−6)+6×0.2=1.2年 → 最短の2年になります。
4年落ちなら、(6−4)+4×0.2=2.8年 → 2年です。
2年の定率法であれば償却率は1.000なので、理屈のうえでは1年で全額を経費にできます。「4年落ちのベンツが節税になる」と言われるのは、これが理由です。
ただし、個人事業主には大きな注意点がある
法人と違い、個人事業主の減価償却は月割りです。
12月に買えば、その年に経費にできるのは12分の1だけ。1月に買った場合とは、12倍の差が出ます。
「年末に車を買って節税」は、個人事業主にはほとんど効きません。
もう1つ。個人事業主の減価償却は、原則として定額法です。定率法を使うには、あらかじめ届出が必要です。届出をしていなければ、2年で均等に割ることになります。
リースはどうか
リース料は、原則として支払った分を経費にできます(事業割合分)。
| 購入 | リース | |
|---|---|---|
| 経費になる時期 | 何年かに分けて | 毎月の支払いごと |
| 初期の支出 | 大きい | 小さい |
| 経理の手間 | 減価償却の計算が要る | 支払いを入れるだけ |
| 自由度 | 売却・改造が自由 | 契約の制約がある |
ただし、所有権移転ファイナンス・リースに当たる契約は、売買と同じ扱いになり減価償却が必要です。契約書の形によって扱いが変わるので、リース契約を結ぶときは書類を確認してください。
総額で見ると、リースのほうが高くつくことが多いです。「経費になるから」ではなく、資金繰りと手間で選ぶのが正解です。
家族名義の車は経費になるか
名義が配偶者でも、実際に事業で使っていて、その費用を事業主が負担しているなら、経費にできる余地があります。
生計を一にする親族の資産を事業で使う場合、その資産にかかる費用は事業主の経費にできる、という考え方です。
ただし、家族に「使用料」を払っても経費にはなりません(生計を一にする親族への支払いは経費にならないルールがあるため)。経費にできるのは、ガソリン代や保険料など、実際に出ていく費用の事業割合分です。
売ったときの扱いを忘れない
事業用の車を売ったときは、注意が必要です。
個人事業主の場合、事業用の車の売却は譲渡所得になります。事業所得ではありません。
帳簿価額より高く売れれば利益、安ければ損失。譲渡所得には50万円の特別控除があるので、結果的に税金が出ないことも多いですが、申告書には書く必要があります。
「売った代金を売上に入れていた」という間違いは、よく見かけます。
車を買う前に確認する3つ
- 事業で使う割合は何%か(その根拠を説明できるか)
- 買うのは何月か(個人事業主は月割り。年末は効果が薄い)
- その車がなければ、売上は減るか
3番が「減らない」なら、それは節税ではなく、ただの支出です。税金を30万円減らすために300万円を使っては、手元の現金は減ります。
節税は、出ていくお金より減る税金のほうが小さいのが原則です。
おわりに
車は、個人事業主にとって必要な経費です。入れ忘れている人も多く、按分をきちんとすれば税額は下がります。
一方で、「節税のために買う」という判断は、ほとんどの場合、損になります。
必要だから買う。買ったものは、根拠をもって按分する。この順番を守ってください。
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※本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。個別の判断は、必ず専門家にご確認ください。
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