自宅が事務所なら、家賃と光熱費はどこまで経費か|家事按分の決め方
自宅で仕事をしている個人事業主から、必ず出る質問です。
「家賃は、いくらまで経費にできますか」
答えは、事業で使っている割合だけです。そして、その割合を自分で決めて、根拠を説明できるようにしておく必要があります。
「だいたい半分」では通りません。何をもとに半分としたのかが要ります。この記事では、家賃・電気・通信費それぞれの分け方と、持ち家の場合の扱いをまとめます。
家事按分とは何か
自宅兼事務所のように、1つの支出が事業にも私生活にも関係しているとき、事業部分だけを取り出して経費にすることを家事按分といいます。
所得税法では、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に経費として認める、という形になっています。
つまり、求められているのは正確さではなく、合理的な基準があることです。
家賃は、何で分けるか
いちばん使われるのは床面積です。
| 分け方 | 使う場面 |
|---|---|
| 床面積の割合 | 仕事用の部屋がある |
| 使用時間の割合 | 部屋を時間で使い分けている |
| 床面積 × 使用時間 | リビングの一角で、日中だけ使う |
例:2LDK 60平方メートル、家賃8万円
仕事専用の部屋が10平方メートルなら、10÷60で約17%。8万円×17%=約13,600円が月の経費になります。
リビングの一部(12平方メートル)を平日の日中(週5日・1日8時間)に使っている場合は、面積20%×時間(8÷24×5÷7=約24%)で、全体の約5%という計算になります。
ここで大事なのは、計算した紙を残しておくことです。間取り図に仕事スペースを書き込んで、面積と計算式をメモしておけば十分です。
割合の目安
業種や働き方によりますが、自宅兼事務所の家賃按分は20〜50%に収まることが多いです。
70%、80%と置くには、それだけの実態が要ります。生活のほとんどのスペースを事業に使っている、という説明ができるかどうかです。
電気・水道・ガスはどう考えるか
電気代
使用時間で分けるのが一般的です。コンセントの数や、使っている機器で説明することもあります。
1日のうち8時間を仕事に使っているなら8÷24で33%。ただし家族が日中も在宅しているなら、そこからさらに調整が要ります。
水道代・ガス代
事務仕事であれば、水道とガスはほとんど事業に関係しません。原則として経費にしにくい支出です。
飲食業、美容室、クリーニングなど、水やガスを使うことが事業そのものという場合は別です。この場合は実態に応じた割合を使います。
インターネット・携帯電話
通信費も使用時間で分けます。仕事専用の回線や携帯を持っているなら、その分は100%経費です。
1台を兼用しているなら、通話明細や使用時間から割合を出します。実務では50%前後にすることが多いですが、ここも根拠を残してください。
持ち家の場合は、家賃が存在しない
自分の家に家賃を払うことはできません。自分に支払った家賃は経費になりません。
持ち家の場合に按分できるのは、次のものです。
- 建物の減価償却費(事業割合分)
- 固定資産税(事業割合分)
- 火災保険料(事業割合分)
- 住宅ローンの利息(事業割合分)
- 修繕費(事業部分)
住宅ローンの元本返済は経費になりません。 利息だけです。
住宅ローン控除との関係に注意
ここが落とし穴です。
住宅ローン控除は、自分が住むための家に対する制度です。事業用に使っている部分には使えません。
ただし、事業用の割合が10%以下であれば、全体を居住用として住宅ローン控除を受けられる取扱いがあります。
事業割合を20%にして経費を増やすと、住宅ローン控除が8割に減ります。どちらが有利かは、計算しないと分かりません。住宅ローン控除の額が大きい人ほど、按分を欲張らないほうが得になります。
青色と白色で、扱いが違うのか
よく言われるのが「白色申告は50%を超えないと按分できない」という話です。
正確には、白色申告の場合、原則として業務の遂行上必要な部分が主である(おおむね50%超)ことが求められ、それ以下でも業務に必要な部分を明らかに区分できれば認められる、という整理になっています。
青色申告の場合は、業務に必要な部分を明らかに区分できれば割合の下限はありません。
実務上は、青色申告にしておいたほうが説明が楽です。65万円控除や赤字の繰越もあるので、自宅兼事務所で仕事をしているなら青色を選ばない理由はほとんどありません。
記録として残しておくもの
按分率そのものより、根拠が残っているかを見られます。次の4つがあれば十分です。
- 間取り図(仕事スペースに色を塗る)と面積の計算メモ
- 1日の使用時間のメモ(何時から何時まで、週何日)
- 賃貸借契約書、固定資産税の通知書
- 毎月の請求書・引落明細
一度作っておけば、毎年使い回せます。按分率を途中で変えるときだけ、理由を書き足してください。
毎年コロコロ変えると、根拠がないと見られます。同じ基準を使い続けることが、いちばんの説得力になります。
おわりに
家事按分は、グレーゾーンではありません。基準を決めて、記録を残せば、堂々と使える制度です。
逆に、根拠なく「半分」と置いた数字は、調査で真っ先に質問されます。
いま自宅で仕事をしていて、家賃を1円も経費にしていないなら、入れ忘れです。間取り図を1枚用意するところから始めてください。
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※本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。個別の判断は、必ず専門家にご確認ください。
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