その支出、経費になりますか|個人事業主が間違えやすい10項目
「これ、経費で落ちますか」
確定申告の時期に、いちばん多く聞かれる質問です。
答えの基準は1つしかありません。その支出が、売上を得るために直接必要だったかです。税務署が見るのもここだけです。
この記事では、個人事業主が間違えやすい10項目を、経費になるもの・ならないものに分けて整理します。判断に迷う支出は、だいたいこの中に入っています。
経費になるかどうかは、何で決まるのか
所得税法では、必要経費を「総収入金額を得るために直接要した費用」と定めています。
ポイントは2つです。
- 事業に関連しているか
- その関連を、他人に説明できるか
1だけでは足りません。領収書があっても、誰と、何のために使ったかを説明できなければ、調査では落とされます。逆に、説明がつくなら金額が大きくても通ります。
「事業に関係あると思って入れた」は、理由になりません。「この取引先と、この案件の打合せで使った」が理由です。
間違えやすい10項目
| 項目 | 経費になるか |
|---|---|
| 1. 所得税・住民税 | ならない |
| 2. 国民健康保険料・国民年金 | ならない(所得控除で引く) |
| 3. 事業主本人の食事代 | ならない |
| 4. スーツ・カバン・散髪 | 原則ならない |
| 5. 本人の健康診断・人間ドック | ならない |
| 6. 交通反則金・罰金 | ならない |
| 7. 借入金の返済(元本) | ならない(利息はなる) |
| 8. 生命保険料 | ならない(所得控除で引く) |
| 9. 自宅の家賃・光熱費 | 事業で使う割合だけなる |
| 10. 10万円以上のパソコン・機械 | 一度には落ちない(減価償却) |
1つずつ補足します。
1〜2. 税金と社会保険料
所得税と住民税は、もうけに対してかかる税金なので経費になりません。一方、事業税・固定資産税(事業用部分)・自動車税(事業割合分)・印紙税は経費になります。
国民健康保険料と国民年金保険料は、経費ではなく社会保険料控除として所得から引きます。経費に入れても所得控除に入れても税額は同じように見えますが、事業所得の金額が変わると、国民健康保険料の計算や各種判定に影響します。正しい場所に入れてください。
3. 本人の食事代
1人で食べた昼食は、事業をしていなくても食べるものなので経費になりません。
出張先での食事も、原則は同じです(法人の出張日当のような仕組みは、個人事業主本人には使えません)。
4. スーツ・散髪
「仕事で着るから」という理由では通りません。私生活でも使えるものは、家事費と見られます。
一方、作業服、安全靴、社名入りのユニフォーム、撮影用の衣装のように、事業以外では使わないものは経費になります。
5. 健康診断
従業員の健康診断は福利厚生費になりますが、事業主本人の分は経費になりません。本人は福利厚生の対象ではないからです。
同じ理由で、事業主本人だけの慰安旅行や、本人分の食事補助も経費になりません。
6. 罰金
交通反則金、延滞税、加算税は経費になりません。罰を軽くしないためです。
ただし、業務中の駐車違反で、従業員が起こしたものも同様に経費になりません(会社が払っても、損金になりません)。
7. 借入金の返済
返済額のうち、経費になるのは利息だけです。元本の返済は、借りたお金を返しているだけなので経費ではありません。
ここを誤解していると、「返済しているのに利益が出ている」という感覚とのズレが生まれます。利益と資金繰りが合わない、いちばん多い原因です。
8. 生命保険料
事業主本人の生命保険は、経費ではなく生命保険料控除です。上限があるので、たくさん払っても引ける額は決まっています。
9. 自宅兼事務所
家賃、電気代、通信費は、事業で使っている割合だけを経費にできます。これを家事按分といいます。割合の決め方は別の記事で詳しく書きます。
10. 10万円以上のもの
パソコン、カメラ、機械、応接セット。1個あたり10万円以上のものは、買った年に全額を経費にできません。使う年数に分けて経費にします(減価償却)。
ただし、青色申告をしていれば30万円未満まで一括で落とせる特例があります。これも別の記事で扱います。
経費にできるのに、入れ忘れているもの
逆に、入れ忘れが多いものも挙げておきます。
- 自宅の家賃・電気代・インターネット代(事業割合分)
- 車のガソリン代、保険料、車検代、自動車税(事業割合分)
- 取引先へのお中元・お歳暮、慶弔費
- 仕事で使う本、新聞、有料メールマガジン
- 同業の会合やセミナーの参加費、交通費
- 仕事用のスマートフォン代
- 事業に関する借入の利息、信用保証料
- クレジットカードの年会費(事業用カード)
- 振込手数料、決済手数料
領収書の出ない支出も忘れがちです。電車やバスの運賃、自動販売機、香典や祝い金。これらは、日付・相手・金額・目的をメモに残しておけば経費になります。出金伝票でも構いません。
迷ったときの判断手順
- その支出がなければ、売上は減ったか
- 私生活でも使うものか。使うなら、事業割合は何%か
- 税務署に聞かれたとき、相手・目的を答えられるか
- その答えを裏づける記録(メモ・メール・予定表)があるか
4まで通れば、堂々と経費にしてください。通らないものを無理に入れると、それ以外の正しい経費まで疑われます。
調査で怖いのは、1件が否認されることではありません。「この人の帳簿は信用できない」と見られることです。
おわりに
経費の判断は、グレーゾーンを攻めることではありません。
事業に必要なものを、漏らさず入れること。そして、その理由を説明できる状態にしておくこと。これだけで、税額も、調査のときの安心感も変わります。
まずは1年分の通帳とカード明細を開いて、上の10項目に当てはまる支出がないか確認してみてください。
個人事業主の方の料金は、個人事業のお客様の料金ページにまとめています。法人の方は法人のお客様の料金ページをご覧ください。
※本記事は2026年10月時点の制度にもとづいています。個別の判断は、必ず専門家にご確認ください。
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