役員の任期は「2年」か「10年」か?機関設計のポイント

2026/06/15 会社設立

株式会社を設立する際、定款で決めなければならない重要事項の一つが
「役員の任期を何年にするか」です。

法律上の原則は「2年」ですが、要件を満たせば「最長10年」まで延ばすことができます。

「とりあえず長めに設定しておけば手間が省けていいのでは?」
と思うかもしれませんが、安易な設定は後々の経営トラブルにつながる危険性があります。

本記事では、役員の任期を「2年」と「10年」のどちらにすべきか、
そのメリット・デメリットと、監査役や取締役会の設置を踏まえた機関設計のポイントを解説します。

1. 原則「2年」、非公開会社は最長「10年」

会社法において、株式会社の役員の任期は以下のように定められています。

  • 取締役・会計参与: 原則 2年
  • 監査役: 原則 4年

しかし、すべての株式に譲渡制限を設けている「非公開会社(株式譲渡制限会社)」であれば、
定款で定めることによって、これらの役員の任期を最長10年まで延ばすことができます

日本の中小企業やスタートアップの多くは非公開会社として設立されるため、
この特例を活用して「任期10年」に設定するケースがよく見られます。

2. 任期「10年」のメリット:登記コストの節約

任期を10年に設定する最大のメリットは、
「重任登記(役員の再任手続き)」にかかるコストと手間を削減できることです。

株式会社は、役員の任期が切れるたびに、
たとえ同じ人が役員を続ける場合(留任・重任)であっても、
法務局での変更登記が必要です。

  • 任期2年の場合:
    2年ごとに重任登記が必要になり、その都度、登録免許税(10,000円)が発生します。
    司法書士に手続きを依頼すれば、さらに数万円の報酬がかかります。
  • 任期10年の場合:
    10年間は登記の更新手続きが不要になるため、この登録免許税や専門家への報酬、
    そして手続きの手間を大幅に節約できます。

3. 任期「10年」のデメリット:不良役員を解任しにくいリスク

コスト面だけを見ると「絶対に10年がいい」と思いがちですが、
ここには大きな落とし穴があります。

役員に就任してもらったものの、後から「期待した働きをしてくれない」
「経営方針で対立した」といった理由で辞めさせたくなるケースは少なくありません。

しかし、任期途中の役員を正当な理由なく解任しようとした場合、
残りの任期分の役員報酬を損害賠償として請求されるリスクが生じます。

任期が10年で、就任2年目に解任しようとすれば、
残り8年分の役員報酬を巡るトラブルに発展する可能性があるのです。

  • 一人社長・家族経営の場合:
    自分や気心の知れた家族だけが役員であれば、解任トラブルのリスクは極めて低いため、
    コスト削減を優先して「10年」に設定しても問題ありません。
  • 友人や外部の人間を役員に入れる場合:
    万が一のトラブルや関係悪化に備えて、安易に10年とせず、
    原則通り「2年」などの短い期間に設定して、
    こまめに評価・再任の判断を行うのが安全です。

4. 取締役会や監査役の設置による機関設計のポイント

会社をどのような体制で運営するか(機関設計)によっても、
役員の選び方や任期の考え方は変わります。

  • 取締役会を設置する場合:
    取締役会を設置するには、取締役が3名以上、監査役が1名以上必要になります。
    必然的に外部の人間を役員に入れる可能性が高まるため、
    任期を長くしすぎない慎重な判断が求められます。
  • 監査役を設置する場合:
    監査役の任期は原則4年ですが、非公開会社なら最長10年まで延ばせます。
    ただし、監査役は取締役の職務を監査する独立した立場であり、
    会社法上、定款によって任期を短縮することは認められていません
    (補欠で就任した場合などを除く)。
    そのため、信頼できる人物を慎重に選任する必要があります。

まとめ:あなたの会社に最適な任期は?

役員の任期設定は、会社の状況に合わせて以下の基準で選ぶのがおすすめです。

  1. 一人社長や家族だけで経営する会社:
    コストと手間を節約できる「任期10年」。
  2. 友人や外部の人間を役員として迎える会社:
    トラブル時のリスクを最小限に抑え、経営の透明性を保つ「任期2年」。

会社の機関設計や任期は、後から定款を変更することでも対応可能ですが、
その際にも株主総会の決議や登記費用がかかります。

設立時に「誰と、どのように会社を経営していくのか」を見極め、
最適な任期を設定しましょう。

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