「任せられる人がいない」の正体|渡せる形になっていないだけ

2026/11/07 経営

「任せられる人がいないんです」

社長からいちばんよく聞く言葉かもしれません。幹部は育っている。社員も真面目に働いている。それでも、判断だけは社長に戻ってくる。

先日まで2日間、経営計画の合宿でした。その最後に、社長へ「これから手放すもの」を書いていただきます。書かれたのは、権限移譲でした。そして、こう続きました。

渡すためには、見える化がいる。

今回は、権限を渡すために何を見えるようにするのかをお伝えします。

任せられないのではなく、渡せる形になっていない

人の問題に見えて、人の問題ではない

「任せられる人がいない」という相談を受けて話を聞いていくと、人の問題でないことがほとんどです。

数字が、社長の頭の中にしかない。判断の基準が、どこにも書いていない。

その状態で「任せた」と言われたら、誰でも固まります。間違えたときに責められるのは自分だからです。だから社員は、念のため社長に聞きにきます。

任せられないのではなく、渡せる形になっていないのです。

優秀な人を採れば解決する、わけではない

ここを人の問題だと考えると、採用や研修に向かいます。しかし、新しく入った人も同じところで止まります。

渡せる形がないまま人を増やすと、聞きにくる人の数が増えるだけです。社長の時間は、かえって減ります。

渡すために、3つを見えるようにする

① 数字

まず、判断に使う数字を社員が見られるようにします。

全部を公開する必要はありません。その人が判断に使う数字だけで足ります。現場の責任者なら、担当する部門の売上と粗利、人件費、主要な経費。それがいつ出てくるかも決めます。

月次が翌月の下旬にしか出ないなら、渡された側は先月の数字で今月を判断することになります。それでは任せられません。

② 判断の基準

次に、どこまでなら自分で決めてよいかを決めます。これが、いちばん抜けています。

書くことは3つです。

  1. 金額の線。いくらまでなら、その人が決めてよいか
  2. 条件。どういう場合は断ってよいか、受けてよいか
  3. 例外。この取引先、この案件だけは必ず社長に通す

A4で1枚あれば足ります。社長の頭の中にある基準を、そのまま書き出すだけです。

③ 結果の確認

渡したら終わり、にしないことです。

決めた内容を、いつ・どんな形で見るかを決めます。週に1回、決めたことを一覧で見る。それだけで構いません。

見ているという事実があるから、渡せます。見ないで渡すのは、任せたのではなく、放したことになります。

「緊急ではないが、重要なこと」は先送りになる

合宿の最後に、緊急ではないが重要なことを3つ書いていただきました。

書かれたのは、事業の範囲を広げること、会社を引き継ぐこと、会社を続けることの3つでした。

どれも、今日やらなくても誰にも怒られません。だから、何年も先送りになります。

2日かけないと、たどり着かない

合宿の途中で、社長の手が止まった場面がありました。5年後の数字を置いていたときです。

いまのやり方では、どこかで上限が見えてくる。1人あたりの売上から人数を逆算すると、それがはっきり数字に出ます。その先に行くには、やり方を変えるしかない。

2日かけて数字を置いたから、そこに行き着きました。最初から「やり方を変えましょう」と言っても、たぶん動きません。数字が先で、結論は後です。

おわりに

社長がいなくても回る会社をつくる。これが私の仕事です。

そのために要るのは、優秀な人ではありません。見えるようにすることです。

まずは、社員が判断に使う数字を1つ決めて、見られるようにしてみてください。そのうえで、金額の線を1本引く。この2つだけで、社長に戻ってくる相談はかなり減ります。

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