「廃業」ではなく「承継」という選択 ― 医院の”この先”を、早く語り始めた人が守られる

2026/07/22 セミナー・講演

医院は今、”静かに”消えている

2024年、医療機関の休廃業・解散は722件に達し、過去最多を更新しました(帝国データバンク)。
10年で約2.1倍。しかもこの数字は、いわゆる「倒産」の約12.9倍にあたります。
倒産のようにニュースになることは少なく、多くの医院はある日そっと灯りを消すように閉じていきます。
だからこそ実態は見えにくく、「うちはまだ大丈夫」と感じているうちに、選択肢が狭まっていきます。

背景にあるのは、先生ご自身の高齢化です。診療所医師の平均年齢はおよそ60歳で、約半数が60歳以上。
一方で、後継者について「決まっていて意思確認まで済んでいる」という医院は、
わずか2割ほどにとどまります。つまり、大多数の先生が「この先どうするか」を、
まだ誰にも相談できないまま一人で抱えているのが現実です。

加えて、一般病院の約7割、一般診療所の約4割が赤字といわれ、
外来患者数も2025年にピークを迎え、以降は緩やかな減少局面に入ると見られています。

こうした流れの中で確実に増えているのが、「廃業」ではなく「承継」という選択です。
第三者承継、M&A、承継開業
医院を閉じるのではなく、次の世代へ引き継ぐ動きが、着実に主流になりつつあります。

なぜ、承継は「後回し」にされるのか

承継が進まない最大の理由は、資金でも制度でもなく「なんとなく」です。
引退がさみしい、まだ元気だから、忙しくて考える時間がない。気持ちはよく分かります。
ただ、早く動くほど選択肢も税負担も有利になるのが承継の特徴で、後回しにするほど不利になります。

その先には、実務上の「4つの難所」があります。

  1. 誰に継ぐか。
    親子・元従業員・第三者では、起きることも進め方もまったく異なります。
  2. スタッフ問題。
    人が辞めれば、患者もその医院の価値も一緒に失われます。新旧の給与差の是正も離職の火種になります。
  3. 値段が見えない。
    「1床いくら」はもう昔の話。
    医院の売り値は「時価純資産+営業権(のれん)」で決まり、
    利益の”見せ方”を整えるだけで数千万円変わることもあります。
  4. 個人か、医療法人か。
    個人クリニックは事業譲渡・再雇用・許認可の取り直しが必要で重く、
    医療法人は出資持分の移動だけで済むため圧倒的に速い。この違いで進め方が根本から変わります。

いずれも、先生お一人で判断するには重く、専門家の整理が要る領域です。

「閉院」と「承継」では、手元に残る額が真逆になる

同じ「引退」でも、結果は大きく異なります。
閉院(廃業)を選ぶと、解体費・原状回復・スタッフ退職金などがのしかかり、
手元資金はおよそ1,000万円超の”持ち出し”になるケースが少なくありません。

一方、承継(譲渡)を選べば、売却益と退職金を確保でき、
手元にはおよそ2,000万〜4,000万円、規模によっては1億円超が残ることもあります。

閉院はコストであり、承継は最大の「出口戦略」になり得る。
この事実こそ、先生に最初に知っていただきたいことです。
実際、院長が急逝した医療法人でも、法人化と生命保険が”盾”となって事業を継続できた事例や、
稼働率の低かった医院が第三者への「2段階承継」で黒字転換した事例など、
早めの備えと適切な設計が明暗を分けています。

これは、先生お一人の問題ではない

承継は、先生だけの課題ではありません。
地域で医院を支える現場の担当者――医薬品卸のMSをはじめ、
日々先生のそばにいる方々にとっても、直結する問題です。

担当先が1件閉院すれば、その取引はまるごとゼロになります。
逆に言えば、医院を次の世代へつなぐことは、地域医療を守ると同時に、
その地域の医療インフラそのものを守ることでもあります。

大切なのは、最初のひと言です。「後継者はいますか」「M&Aしませんか」と切り出すと、
売り込みに聞こえて先生は身構えてしまいます。

そうではなく、「先生、この先の医院のこと、5年後・10年後をどうお考えですか」。
この問いかけが、相談の入口を開きます。承継は急に決まるものではありません。
だからこそ、早く方針を聞いた人が、信頼される「つなぎ役」になれます。

まずは「5年後・10年後」を言葉にすることから

院長が60歳以上、後継者が未定、5年後の方針が決まっていない、
院内に継げそうな人がいない、設備更新や借入の予定がある。

こうした項目に3つ以上あてはまるなら、それは「そろそろ考え始める」サインです。
焦って決める必要はありません。

まずは現状を”見える化”し、選択肢を一つずつ並べてみることから始めれば十分です。

私たちサンブレイン税理士事務所は、
医科・歯科を専門に、法人設立から財務・採用・組織づくりまで一貫してご支援しています。

承継は、税務・法務・人の問題が複雑に絡み合う領域です。
だからこそ、利益の正常化による適正な評価づくりから、医療法人ならではのスピードを生かした設計まで、
専門家として先生の「この先」を一緒に描いていきます。

医院の未来は、早く語り始めた人から守られていきます。
5年後・10年後をどう考えるか。その最初の一歩を、どうぞお気軽にご相談ください。

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