【2027年4月】食料品の消費税「1%」は、全業種に効いてくる ― 中小企業が今から備えるべきこと
「食品だけの話」だと思っていませんか
2026年8月、政府は食料品の消費税を 2027年4月から「1%」に引き下げる 方針を表明しました。
現在の8%(軽減税率)から、さらに7ポイント下がる大きな減税です。
しかも 2年間の期間限定 で、2029年4月には8%へ戻る見込みとされています。
ニュースの見出しだけを見ると、「スーパーや食品メーカーが安くなる話」「うちには関係ない」
と感じる経営者の方が多いかもしれません。しかし、ここが落とし穴です。
食料品の税率が1%に下がることで、食品を直接扱っていない会社にも、実務と資金繰りの面で影響が及びます。
本コラムでは、中小企業の経営者・個人事業主の方に向けて、
その仕組みと「今から備えるべきこと」を、できるだけシンプルに整理します。
そもそも消費税は「差額」を納める仕組み
まず前提の確認です。消費税は、事業者にとって「お客様からもらった消費税 − 仕入れや経費で払った消費税」、
この差額を国に納める仕組みになっています。
通常はもらった額のほうが多いので、その差額を「納付」します。
ところが、払った消費税のほうが多くなると、差額は逆に税務署から「還付(返金)」 されます。
ここが今回のポイントです。
なぜ全業種に関係するのか
食品を扱う会社を例にとります。2027年4月以降、食品の売上にかかる税率は1% に下がります。
一方で、その商売を支える 家賃・水道光熱費・広告宣伝費・システム費・物流費・設備費などは、
これまでどおり10%のまま です。
つまり、「もらう消費税(売上1%)」は小さくなるのに、「払う消費税(経費10%)」は変わらない。
結果として 払った消費税のほうが大きくなり、多くの食品事業者が『還付』を受ける立場に変わります。
還付と聞くと得のように思えますが、実務上はそう単純ではありません。
見落としやすい3つの影響
① 食品事業者 ― 「還付は入るが、入金が遅い」
還付は、決算後に消費税の申告をしてはじめて受けられます。
しかも消費税の還付は、法人税や所得税に比べて税務署の審査が厳しく、
近年は入金まで数か月かかる ことも珍しくありません。
2027年4月以降は還付になる会社が一気に増えるため、審査はさらに混み合い、遅れることが予想されます。
「仕入れや経費で消費税を先に払い、還付の入金は半年後」 という状態になれば、
帳簿上は利益が出ていても、手元資金は苦しくなります。資金繰りの事前準備が欠かせません。
② 外食産業 ― 「持ち帰り」が有利になり、事業がゆがむ
外食では、持ち帰り(テイクアウト)は食品扱いで1%、店内飲食は10% と、
同じ商品でも税率が大きく分かれます。この差が広がることで、外食は持ち帰りに対して不利になり、
「実質は店内なのに持ち帰り扱いにする」といった、税率に合わせた不自然な事業判断が起こりやすくなります。
テイクアウトかどうかの線引きをめぐる確認作業も増えるでしょう。
③ 農家・免税事業者 ― インボイス登録を迫られ、手取りが減る
小規模な農家など、売上1,000万円以下でこれまで消費税を納めていなかった 免税事業者 にとっては、
より深刻です。還付を受けるには、そもそも自らが 課税事業者(インボイス登録) で、
かつ「本則課税」という手間のかかる方式で申告する必要があります。
登録しなければ還付は受けられず、実質的な手取りが減る 可能性があります。
結果として、小規模事業者ほど、望まなくても登録と事務負担を迫られる構図になります。
会計・レジの実務も複雑になる
税率は今後、10%(標準)・8%(新聞など)・1%(食品)の3段階 になります。
これにより、レジ・会計ソフト・請求書の対応が必要になります。
たとえば80円の食品にかかる1%は0.8円で、店による端数処理の違いから、
受け取ったレシートと自社データにわずかな差が生じ、照合の手間が増える、
といった細かな負担も想定されます。
しかも2年間の限定措置のため、2年後には税率を戻すための再対応 が再び発生します。
今からのスケジュール ― 期限のあるものに注意
制度は秋の臨時国会で固まる見込みですが、期限が決まっている手続き から先に押さえておくと安心です。
2026年12月31日まで ― 個人事業主および12月決算の法人で、売上5,000万円以下の方は、
消費税の計算方式を「簡易課税」にするか「本則課税」にするかを選ぶ届出の期限です。
還付を受けたい場合は「本則課税」を選ぶ必要があります。
一度選ぶと2年間は変更できないため、どちらが有利か、数か月前から試算しておくことをおすすめします。
2027年3月17日まで ― 免税事業者(農家など)が2027年4月1日から課税事業者になりインボイスを使うには、
その15日前にあたるこの日までに登録手続きが必要です。
2027年3月31日まで ― 3月決算の法人は、上記の課税方式の届出期限がこの日です。
このほか、「課税期間の短縮」 という手もあります。
通常は年1回の消費税申告を3か月ごと・1か月ごとに前倒しし、その都度早く還付を受ける方法です。
事務負担は増えますが、資金繰りを重視するなら選択肢になります(こちらも2年縛り、事前の届出が必要です)。
まとめ ― 決まる前に、動き出す
食料品の消費税1%は、「食品業界だけの減税」ではありません。
消費税の仕組みを通じて、業種を問わず資金繰りと実務にかかわってきます。
そして、対応の可否を分けるのは “情報” と “準備の早さ” です。
「うちは食品じゃないから関係ない」で止まらず、まずは自社が 還付になるのか納付になるのか、
どの届出をいつまでに出すのか を確認するところから始めてみてください。
制度が固まってからでは、届出の期限に間に合わないケースも出てきます。
ご自身の会社にどう影響するか整理したい方は、お気軽にご相談ください。
数字を一緒に棚卸しするだけでも、打ち手がはっきりします。
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