知らないと損する「繰延節税」─先延ばしが、なぜ手元のお金を増やすのか

2026/07/17 税務

「繰延節税は意味がない」は本当でしょうか

繰延節税と聞くと、「どうせ税金を翌年に先送りするだけで、トータルでは変わらないのでは?」
と感じる方は少なくありません。実際、そう説明する専門家もいます。

しかし結論から言うと、これは大きな誤解です。

繰延節税は単なる「支払いの先延ばし」ではなく、
使い方次第でトータルの納税額そのものを減らし、
さらに会社のお金の流れ(資金繰り)まで安定させてくれます。
攻めと守りを兼ね備えた手法なのです。

カギを握る法人税の「800万円の壁」

なぜ先送りするだけで税金が減るのでしょうか。
その理由は、法人税の税率が一律ではない点にあります。

中小企業の場合、利益のうち800万円までの部分にはおおよそ23%、
800万円を超えた部分にはおおよそ33%というように、
二段階の税率が設定されています(あくまで目安です)。

つまり、利益が800万円を超えると、その上の部分だけ税率が一気に約10%も跳ね上がります。
ここが繰延節税を考えるうえでの最大のポイントになります。

利益を「平準化」すると税金が安くなる理由

簡単な例でイメージしてみましょう。
会社の業績は、好調な年もあれば赤字の年もあり、毎年デコボコするのが普通です。

仮にある年に2,000万円の利益が出たとします。
このとき800万円を超える1,200万円分には、高い方の約33%がかかってしまいます。

一方で、この超過分を翌年以降に少しずつ繰り延べ、
毎年の利益を800万円前後にならしていくと、常に低い方の約23%の範囲に収まります。

数年単位でシミュレーションすると、業績の波をそのままに納税し続けた場合と比べ、
利益を平準化したケースでは合計で数百万円から一千万円近く税金が変わってくることも珍しくありません。
利益の総額が同じでも、デコボコをならすだけでこれだけ差が出るのです。

繰延節税は「守りの経営」にもなります

メリットは節税だけではありません。
中小企業を続けていれば、景気変動や予期せぬトラブルで赤字に転落する年が、
必ずと言っていいほど訪れます。

好調なときに何も対策せず税金を払い切っていると、
いざ赤字のとき手元資金が乏しく苦労しがちです。

そこで好調なうちに利益を繰り延べておけば、赤字の年にその利益を戻して穴埋めができます。
赤字を黒字に転換させて手元資金を確保できるうえ、銀行からの評価も保ちやすくなります。
この点も見逃せません。

決算前でも間に合う!代表的な繰延節税の方法

「もう決算が目前だけれど、今からでも間に合うのか」という方へ、直前でも使いやすい手法を挙げておきます。

  • 広告宣伝費
    今期中に広告を打てば原則その期に全額経費化できます。
    来期の売上づくりにもつながります。
  • 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
    年払いなら最大240万円をまとめて経費にできます。
    40ヶ月以上続ければ解約時に全額戻る点も魅力です。
  • 決算月の変更
    利益が大きく出た月の手前に決算期をずらし、その利益を翌期に回す方法です。
    届出書を出すだけと手続きも簡単です。
  • 決算賞与
    社員へのボーナスを決算前に確定させて経費にできます。
    社員への還元にもなります。
  • 不要な固定資産の処分
    使っていない30万円以上の資産を処分すれば、その分を経費に落とせます。

「前払い=全額経費」になるもの・ならないもの

初心者がつまずきやすい注意点をひとつお伝えします。
同じ「前払い」でも、全額を今期の経費にできるものと、
期間で按分しなければならないものがあります。

家賃・保険・倒産防止共済などは、来期分をまとめて払っても今期の経費にできます。
共通点は、サービスが継続的で、人の手が大きく動かず、内容の質も毎月変わらないことです。
反対に広告宣伝費のように、月ごとに内容が変わったり人が動いたりするものは、
期間で分けて経費にする必要があります。
たとえば3月決算の会社が3〜5月にまたがる広告に支払った場合、
今期の経費にできるのは3月分だけ、というわけです。

まとめ

繰延節税は「ただの先延ばし」ではなく、税率の壁を上手に使って納税額を抑えつつ、
赤字の年に備えて資金繰りを守る、攻守一体の経営戦略です。
とくに業績に波がある会社ほど効果は大きくなります。
ただし手法ごとに細かなルールがありますので、実行前には信頼できる税理士に相談し、
自社に合った形で取り入れていきましょう。

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