【高知】値下げしないと決める|エルメスが店を減らして利益率41%になった理由
「少し勉強してもらえませんか」
この一言で、その場の空気が決まります。社長が即答できないと、社員は「下げてもいい会社だ」と覚えます。そして次からは、社長に聞かずに下げるようになります。
高知で社長のご相談を受けていると、同じような場面によく出会います。
先日、エルメスを分析する対談を見ていて、この場面を思い出しました。値引きをしない会社が、どうやって利益を出しているのかという話です。
今回は、値下げをしないと決めるために、何を先に決めておくかをお伝えします。
定価200万円のバッグが、500万円で取引される
エルメスのバーキンは、正規の価格がだいたい200万円。中古市場では400万から500万で取引されています。クロコダイルの小さいサイズになると、定価で860万円だそうです。
買った瞬間に倍以上になる。普通なら、売る人が出ます。
ところが、ほとんど出回りません。
なぜ、誰も売らないのか
バッグには1点ずつ番号がついていて、買うときには身分の確認があります。誰が転売したかが分かる仕組みです。
転売すれば300万円近く儲かりますが、その瞬間に二度と買えなくなる。だから、誰も売りません。
売らないから市場に出てこない。出てこないから、ますます欲しくなる。この輪を、会社が自分で作っています。
買うには、先に顧客になる
そもそも、店に行っても置いていません。工場で作らず、職人が作れるペースでしか作らないからです。需要に合わせて増やす、ということをしていません。
では、どうすれば買えるのか。先に顧客になる必要があります。香水を買う。スカーフを買う。洋服を買う。そうして通い続けた方に、声がかかる。
買う前に、お客様のほうが投資をしていることになります。
店を減らして、売上3倍・営業利益率41%
ここからが、経営の話です。
エルメスの店舗数は2011年の328店舗がピークで、いまは294店舗。その間に売上は3倍、営業利益率は41%になりました。製造業で41%は、まずありません。
値上げでは、利益は増えない
値上げをしたからだろう、と思いました。実際、値上げはしています。
ただ、数字を分解すると違いました。粗利率は、ほとんど上がっていないそうです。革の値段が上がり、職人の人件費も上がっている。原価も一緒に上がっているからです。
では、何が利益を作ったのか。販管費です。
売上が3倍になっても、販管費はその伸びほど増えていない。店を減らしているからです。
利益を作ったのは、値上げではなく、固定費を増やさなかったこと
これは中小企業でも同じです。値上げをすると粗利の金額は増えますが、原価も上がっているなら率は変わりません。残るかどうかを決めるのは、そのあとです。
売上が伸びたときに、人を増やすか。事務所を広げるか。店を出すか。そこで固定費を増やすと、利益は残りません。
「やらない」を先に決めている
エルメスがやらないと決めていることは、3つあります。
- 値引きをしない
- 生産を安い国に移さない
- 広告を、最小限しか出さない
そのかわりに、職人を育て、価格を上げ、買いにくくしてきました。
普通の会社は、お客様を集めるために売ります。エルメスは、売らないことでお客様を選んでいます。
中小企業が、明日から真似できること
ブランドの世界観は、すぐには作れません。ただ、仕組みのほうは今日から決められます。
① 値引きの下限を決めて、社員に伝える
多くの会社で、下限は社長の頭の中にしかありません。だから現場が引いてしまいます。
決めることは3つです。
- 何%まで下げてよいか。粗利率から逆算する
- 誰が決めてよいか。金額で区切る
- 下げる代わりに何をもらうか。数量、支払条件、次の注文
② 下げたときに何が起きるかを、数字で持っておく
値引きの怖さは、感覚ではなく算数です。
粗利率30%の会社が10%値引きをすると、粗利は30から20に減ります。同じ粗利を稼ぐには、販売数量を1.5倍にしなければなりません。
粗利率が低い会社ほど、この影響は大きくなります。自社の粗利率で一度計算して、紙に書いて持っておいてください。社員に説明するときにも使えます。
③ 断る基準を決める
エルメスは、転売する人には売りません。断る基準があるということです。
自社で断る基準を1つだけ決めてください。値段だけで選ぶお客様なのか、支払いが遅れるお客様なのか、無理な納期を求めるお客様なのか。
断る基準がない会社は、値段で選ばれ続けます。
おわりに
中小企業は、どうしても値下げで戦おうとします。しかし大手と同じ土俵に乗った瞬間に、勝ち目はありません。
小さい会社こそ、エルメスの側に立つべきだと思っています。数で勝てないなら、選ばれ方で勝つしかないからです。
まずは、自社の粗利率を確かめてください。そのうえで「ここから下げない」という金額を決めて、社員に伝えてください。決まっていないから、現場が下げるのです。
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