「話していい人がいた」ある社長が流した涙のこと― 経営の”本音”を、話せる相手はいますか?

先日の経営相談で、ある経営者の方が、ふっと涙を流されました。
つらいことがあったから、ではありません。
むしろ、その逆でした。
その方は、お父様が一代で立ち上げた事業を継いで、30年。
リーマンショックも、コロナも、なんとかくぐり抜けてこられた方です。
5年前には、長年、重くのしかかっていた大きな借入も、ついに完済された。
はたから見れば、もう安泰そのものです。
けれども、席についてしばらくして、その方は、こうおっしゃいました。
「事業の財務のこと、”台所事情”は、なかなか、誰にも話せないんです」と。
数字は相談できても、「孤独」は相談できない
経営者には、たくさんの相談相手がいるように見えます。
顧問の税理士、取引先の銀行、同業の仲間。
けれども、いざ「会社のいちばん奥の数字」や「これからへの不安」を打ち明けられる相手となると、
驚くほど、いなくなります。
この方も、長くお世話になっている税理士の先生がいらっしゃいました。
数字の相談はできる。申告も、きちんとしてくれる。
それでも、”経営の孤独”そのものまでは、分かち合えなかった。
むしろ、話すほどに、かえって孤独が深まってしまう日もあった、とおっしゃいます。
これは、その税理士の先生が悪い、という話ではありません。
役割が、違うのです。税務の専門家は、数字を正しく処理してくれます。
けれども、「この決断で、本当にいいのだろうか」という、
経営者の胸の内にまで寄り添うことは、また別の仕事なのです。
そして、その”別の仕事”を担う相手を、多くの社長が持てないまま、走り続けています。
社長には決定権がある。だからこそ、孤独。
なぜ、経営者はこれほど孤独なのでしょうか。
理由は、シンプルです。社長には、決定権があるからです。
最終的に決めるのは、いつも自分一人。従業員に弱音は吐けない。家族に心配はかけたくない。
銀行に不安は見せられない。だから、いちばん重い問いを、たった一人で、じっと抱え込むことになります。
その重さは、経験した人にしか、分かりません。
そして厄介なことに、この「一人で抱え込む」状態は、会社にとっても、静かなリスクになります。
人は、一人で悩み続けると、視野が狭くなり、判断が鈍っていくものだからです。
相談できないこと自体が、経営の質を、少しずつ削っていく。
孤独は、社長の心だけでなく、会社の未来にも、じわりと効いてくるのです。
いちばんの安心感は、売上でも、利益でもない
その方は、経営相談の中で、こうも言葉にされました。「話していい人がいた」「話して、よかった」と。
ずっと張りつめていたものが、ふっとゆるんだ。その瞬間に、涙がこぼれたのだと思います。
このとき、私は改めて感じました。
経営者にとって、いちばんの安心感は、もしかすると、売上でも、利益でもないのかもしれない、と。
「話せることがある」。「話せる人が、いる」。
たったこれだけのことが、孤独な決断を続ける社長を、静かに、けれど確かに支えてくれます。
だからこそ、お伝えしたいのです。経営の相談相手を持つことは、弱さでも、贅沢でもありません。
それは、経営を続けていくための、”安全装置”のようなものです。
一人で抱えないための仕組みを持っておくことは、むしろ、責任ある経営者の備えだと、私は思っています。
貴社には、経営の本音を話せる相手がいますか
一度、静かに考えてみてください。
いま、貴社の”いちばん奥の数字”や、これからへの不安を、飾らずに話せる相手が、どこかにいるでしょうか。
もし「いないな」と思われたとしても、それは、貴社が弱いからでも、社長として未熟だからでもありません。
多くの経営者が、同じ場所に立っています。
どうか、一人で抱え込まないでください。
同じ悩みも、言葉にして話すだけで、驚くほど、頭も、心も軽くなります。
私の経営相談は、正しい答えを押しつける場ではありません。
まずは、安心して話せる場所であること。
そして、経営者ご自身の意向を尊重しながら、次の一歩を一緒に考えること。
そこを、何より大切にしています。気になることがありましたら、どうぞお気軽に、ご相談ください。
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