なぜ、あの会社は人が辞めても回るのか

2026/08/17 経営

中小企業を静かに縛る「属人化」と、その解き方

先日、歯科医院の倒産が過去最多になった、というニュースを目にしました。
東京商工リサーチによれば、2025年度の歯科医院の倒産は31件。
前の年の約1.5倍で、過去20年で最も多い数字です。

医療機関全体では71件にのぼり、そのうち97%が「破産」、
つまり立て直す間もなく閉じるしかなかったケースでした。

数字だけを見れば、遠い業界の話に思えるかもしれません。

ですが、その背景に挙げられていた原因を読んで、私は思わず手を止めました。
院長先生の腕でも、設備でもない。

深刻な人手不足、人件費の高騰、物価高。
そして何より、「これから何をすべきか」という答えが、
院長先生おひとりの頭の中にしかない、という構造です。

これは、歯科業界だけの話でしょうか

私は、まったく同じ話だと感じました。
町工場も、建設会社も、小さな会計事務所も、いわゆる中小企業のほとんどが、同じ構造を抱えています。

たとえば、一人の社員がお客様担当として「一人前」になるまでには、どれくらいかかるでしょうか。
現場の実感では、3年から5年です。
やっと育った頃には、その人の頭の中に、お客様ごとの事情、仕事の段取り、
過去のやりとりや前回の提案までが、すべて詰まっています。

問題は、その人が辞めた瞬間に起こります。

引き継ぎ資料は、あってもA4一枚。残りはすべて「記憶」です。
担当者が去れば、会社から記憶ごと消えてしまう。

採用が難しく、若手の離職も早い今、この構造は事務所の生産性を静かに縛り続けます。
これが、中小企業でいちばん根の深い病、「属人化」です。

属人化は、根性では直らない

では、どうすればよいのでしょうか。
ベテランに「もっと丁寧に引き継ぎを」とお願いするだけでは、また同じことが繰り返されます。
属人化は、個人の頑張りではなく、仕組みで解くべき問題だからです。

やること自体は、意外なほどシンプルです。会社の中で交わされる言葉を、ぜんぶ残していくのです。
会議も、営業の場も、日々の何気ない打ち合わせも。

加えて、これまで整理しきれていなかった資料やマニュアルも。
録音し、書き出し、一つの場所にためていく。
頭の中にしかなかった暗黙知を、会社みんなが見られる「共有財産」に変えていきます。

そして、ここで大きく変わったのが、AIの存在です。
かつては、情報をためても、必要なときに探し出すことができず、結局は担当者に聞くしかありませんでした。
いまは、ためた言葉をAIが整理し、質問すれば言葉にして引き出してくれます。
新人が「先輩、今いいですか」と手が空くのを待つ必要もありません。
担当が代わっても、新しい人が入っても、「会社の記憶」はそこに残り続けます。

こうして人は、単純な作業から解放され、
本来やるべき「考える」ことや「お客様と対話する」ことに時間を使えるようになります。

属人化を仕組みに変えられた会社から、この人手不足の時代を静かに抜けていくのだと思います。

貴社の「記憶」は、いま誰の頭の中にありますか

一度、静かに考えてみてください。
もし来週、あの人が辞めたら、来月、会社はいつも通り回るでしょうか。
即答で「回る」と言えなかったとしたら、それは弱点ではなく、これから手を打てる伸びしろです。

貴社にとっていちばん大切な知識や判断は、いま、どこにあるでしょうか。
特定の誰かの頭の中だけに眠っていないでしょうか。

私の経営相談では、こうした「会社の記憶の残し方・活かし方」も含めて、
貴社の現状を一緒に整理していきます。同じ悩みも、言葉にして話すだけで、驚くほど頭がすっきりするものです。気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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