「辞めます」と言われてから慌てても、もう遅い —優秀な人ほど、黙って去っていく

2026/07/07 経営

先日、DMMの亀山会長の対談を見ていて、給料の決め方の話にドキッとしました。
給料って、経営やチームを持つ人なら一度は頭を抱えるテーマですよね。
私も例外じゃありません。

亀山さんが話していたのは、ビデオレンタルをやっていた頃のこと。
すごく優秀な店長さんがいた。でも寡黙で、文句も要求も一切言わないタイプ。
だから、その人の給料を「ちょっとしか」上げていなかったそうです。

そしたらある日、突然。「すいません、辞めさせてもらいます」。

慌てて「給料1.5倍出すから残ってくれない?」と引き止めても、
「もう決めたことなんで」と去っていった。

この話、私にはすごく刺さりました。刺さったというより、痛かった

「何も言わないから、まあいっか」の怖さ

考えてみると、私たちはつい、声の大きい人に反応してしまうんですよね。
「給料上げてください」「これ大変なんです」と言ってくる人には、つい「わかったわかった」と動く。

逆に、何も言わずに黙々とやってくれている人は、後回しになる。
「あの人は何も言わないから、まあいっか」って。

でもよく考えたら、それって順番が逆なんです。

不満を口にする人は、まだ会社に期待している。
言えば変わると思っているから、言う。
本当に見切りをつけた人は、何も言わずに、静かに準備を始める。
そしてある日、「辞めます」とだけ言って去っていく。

亀山さんが後悔していたのも、まさにそこでした。
「だったら言われる前に上げとけば良かった」。
でも、辞めると言われてから慌てて1.5倍を提示しても、もう遅い。
人の心が離れてから積む数字には、意味がないんですよね。

相場じゃなくて、「自分にとって必要な人か」

亀山さんの言葉で、もう一つ印象に残ったものがあります。
「相場がどうこうじゃなくて、”自分にとって必要な人か”で決める」。

やめてほしくない人は、もう高くするしかない。
逆に「この人がいなくても何とかなるかな」と思えるなら、そこまで上げなくてもいい。
世間の相場がいくら、という話ではなく、今この人が抜けたら本当に困るか—その一点で決める、と。

一見ドライに聞こえます。でも私は、これはすごく誠実な考え方だと思いました。
だって、「相場だから」で決めるのは、ある意味ラクなんです。
数字に責任を預けられるから。
でも「自分にとって必要か」で決めるということは、一人ひとりをちゃんと見て、
値づけの責任を自分で引き受けるということ。逃げずに向き合う、ということなんですよね。

赤字でも黒字でも、社員には関係ない

意外だったのが、「赤字か黒字かは、実は社員の給料とあまり関係ない」という話です。

社員からすれば、会社が赤字かどうかはどうでもいい。
同じ仕事をして、他社より少しでもいい給料なら、人は残ってくれる。
逆に、将来伸びると信じているなら、利益が出る前に先に払うしかない。

そのリスクを取るのが経営者の仕事であって、
社員に「経営者と同じ覚悟を持て」と求めすぎるのは違う。
この線引きも、聞いていてハッとしました。人を雇うって、こういう覚悟とセットなんだ、と。

一番ラクな「全員一律」を、選ばない

給料を決めるのは、本当にプレッシャーです。
亀山さんも「悩んで悩んで、本当にしんどい」と言っていました。

一番ラクなのは「全員一律5%アップ」。誰も文句を言わないから。
でも、頑張っている人も、そうでない人も同じ扱いにすると、
結局いちばん頑張っている優秀な人から辞めていく。
ラクな道を選ぶと、一番残ってほしい人を失う。ここでも、さっきの店長さんの話とつながるんですよね。

結局これは、”在り方”の話

一連の話を聞いて、私が一番感じたのはこれです。

給料の決め方は、数字の技術に見えて、
実は「人をどれだけ大事にできるか」という在り方の話だということ。

大事にするって、気持ちだけじゃ伝わらないんですよね。
心の中で「ありがたいな」と思っているだけでは、相手には届かない。
ちゃんと形にして—それが給料なら数字にして—初めて伝わる。

無口で何も言わない人ほど、ちゃんと見てあげないと、一番失いたくない人を、静かに失ってしまう。

気にかけている人ほど、言われる前に、動く。
私自身、まわりの”言わない人”を、もう一度ちゃんと見てみようと思いました。