スターバックスが日本事業を売却検討。”ひとり勝ち”の裏にあるビジネスモデルから学べること

2026/06/16 経営

先日、こんなニュースが飛び込んできました。

「米スターバックスが、日本事業の売却を検討している」

え、いつも繁盛している、あのスタバを?

正直、最初は意味が分かりませんでした。
日本のスタバといえば、どこに行っても満員。
ドライブスルーには警備員が立ち、いつも行列。
“絶好調”のイメージしかなかったからです。

調べてみると、このニュースには、経営を考えるうえでとても大切なヒントが詰まっていました。
今日は、コーヒー1杯から見えてくる「ビジネスの本質」について書いてみたいと思います。

いつも満員のスタバが、なぜ「売却」されるのか

報道によると、スターバックス本社は日本事業の株式売却やIPO(新規株式公開)を含めた複数の選択肢を、
投資銀行と初期段階で検討しているそうです。
売却された場合の規模は、4000億〜5000億円にのぼる可能性があるといいます。

日本のスターバックスは店舗数およそ2100店。
その約9割を直営で運営し、サービスの質や店舗展開を自社でコントロールできる体制を築いています。
海外進出のなかでも「最大の成功事例」と評されてきた、いわば虎の子の事業です。

その虎の子を、なぜ手放すのか。

日本のスターバックスは、世界のなかで”ひとり勝ち”

実は日本事業、業績はむしろ絶好調です。

  • 売上高は前年比111.1%
  • 営業利益は前年比115.4%
  • 1店舗あたりの売上は年間1億6200万円(前年比105.4%)

世界の全店舗に占める日本の割合は約4.9%にすぎませんが、
売上構成比では5.9%。少ない店舗数で、それ以上の収益を生み出しているということです。
世界中で苦戦が続くなか、日本だけが突出して好調を維持しています。

引き金は、本国アメリカの不振

では、なぜ好調な日本を売るのか。理由は、本国アメリカにあります。

スターバックスは全売上の約7割を占める米国事業の不振が続いています。
度重なる値上げによる客離れ、コスト増。
海外最大市場の中国でも地元チェーンとの競争に押され、
すでに2025年には中国事業の株式の過半を現地の投資ファンドへ売却しました。

つまり、本体の立て直しに必要な資金をつくるために、
最も健全な日本事業までもがテーブルに載っている。
そういう構図です。
私自身、米国本国がそこまで追い込まれていたことを、このニュースで初めて知りました。

スターバックスの強さは「サードプレイス」という価値

スターバックスは、経営の研修などでも優良企業のモデルとして、よく取り上げられてきました。

ここで改めて確認しておきたいのは、
スターバックスが売っているのは「コーヒー」ではない、ということです。

家でも職場でもない、第三の居場所「サードプレイス」。
落ち着いて本を読んだり、仕事に集中したり、人を待つあいだにふらっと立ち寄ったり。
スターバックスが提供しているのは、この”心地よい時間と空間”という価値です。

私自身、集中したいときに本を読んだり、
事業について考えを巡らせたりする場所として、よく利用しています。
子どもの送り迎えの合間に立ち寄ることも。
私にとっても、まさにサードプレイスなんですよね。

だからこそ、多少高くても、お客様は納得してお金を払う。
これが高粗利・高収益のビジネスモデルの土台になっています。

実は半分「金融業」? プリペイドカードの仕組み

スターバックスの収益構造で見逃せないのが、プリペイドカードです。

お客様に先にチャージしてもらい、その残高をあらかじめ預かる。
ギフトにも使われ、利用されないまま残る金額も少なくありません。
会社からすれば、無利子で運用できる資金を大量に確保していることになります。

コーヒーを売りながら、キャッシュの循環をつくる。
これはもう、半分は金融業と言ってもいいかもしれません。

同じ1杯でも、売り方で利益はまるで変わる

ここまで見てくると、見えてくることがあります。

同じ「コーヒー1杯」でも、何を価値として届けるかによって、
利益の生まれ方はまるで変わる。
そして同じスターバックスでも、国や地域によって、儲かり方はまったく違う。

ビジネスとは、結局「何を売るか」ではないのだと思います。
お客様がどんな人で、何を求めているのか。そこに対して「どう価値を届けるか」。
コーヒー1杯から、改めてそう考えさせられました。

まとめ:現状維持は、衰退

世界一の成功事例とされた日本事業でさえ、本体の事情ひとつで売却が検討される。
これだけ盤石に見える企業でも、立ち止まれば一気に状況が変わります。

現状維持は、衰退。

企業にとって大切なのは、今の好調に安住することではなく、
常に未来を見据えて経営のロードマップを描き続けることなのだと、
今回のニュースから改めて感じています。

あなたのビジネスは、3年後・5年後を見据えた地図を、いま手にしているでしょうか。


※本コラムは、米ブルームバーグ通信ほか各社の報道(2026年6月)をもとに構成しています。
売却は最終決定されたものではなく、初期段階の検討と報じられています。

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