その新規事業は、なぜ「ゼロ」で終わったのか― 新しい市場に踏み出す前に、社長がやっておくべきこと

先日、経営相談にいらした社長がいらっしゃいました。
とても前向きで、行動力のある方です。開口一番、こうおっしゃいました。
「新しい市場に打って出たいんです。新規事業で、会社を大きくしたい」
夢を、たくさん語ってくださいました。
海外への展開、新しい商品づくり、これまでにない売り方。
話を聞いているこちらまで、わくわくするような構想です。
ところが、ご一緒に決算書を開いてみると、景色が少し変わりました。
私は、失礼を承知で、正直にお伝えしました。
「その挑戦、いまの”足元”のままだと、危ないかもしれません」
華やかな計画ほど、足元が見えなくなる
数字を一つずつたどっていくと、その会社は、こんな状態にありました。
利益が、ほとんど残っていない。むしろ、少し赤字ぎみです。
売上の大半は、ごく少数の取引先に集中している。
そして、せっかく稼いだ粗利益の多くが、人件費で消えていました。
土台が、まだぐらついていたのです。
この状態のまま、華やかな新しいこと
新規事業や、新しい市場に飛び込むと、どうなるか。
実は、この社長も、すでに一度、鳴り物入りで新しい挑戦を始めておられました。
半年後には、これくらいの売上をつくる。
そう目標を立てて、カタログを用意し、遠方まで足を運び、動いてこられた。熱意は、本物でした。
けれども、半年後の結果は、ほぼ、ゼロでした。
これは、能力の問題でも、努力不足でもありません。順番の問題です。
足元の利益構造が固まっていないまま、遠くの夢に手を伸ばすと、
イメージだけがどんどん膨らんで、現実がついてこない。
時間もお金も注いだのに、成果が残らない。そういうことが、本当に起きるのです。
夢は、足元の数字の上にしか立たない
では、新しいことを始める前に、まず何をすべきか。
答えは、地味に聞こえるかもしれません。
「自社の”稼ぐ構造”を、数字で理解すること」です。
どの商品で、どの取引先で、いくら利益が出ているのか。
稼いだお金は、いったいどこへ消えているのか。
一社、あるいは一人のお客様に、依存しすぎていないか。粗利益の中に、実は固定費が紛れ込んでいないか。
こうした問いに、数字で答えられる状態をつくる。それだけで、打ち手はまるで変わります。
たとえば「売上を伸ばそう」と考えていた社長が、数字を分解した結果、
「伸ばすより先に、この一社への依存を減らすほうが先だ」と気づく。
あるいは、「新商品を作るより、いまの主力商品の単価を見直すほうが、利益への効き目が大きい」と分かる。
同じ会社、同じ社長でも、見えている数字が変われば、選ぶ道が変わるのです。
夢を描くことは、経営者にとって、とても大切な力です。それを否定するつもりは、まったくありません。
ただ、その夢を”現実”に変えるのは、いつだって、足元の数字なのです。
数字は、社員を動かす「共通言語」になる
もう一つ、数字を見える化することには、見落とされがちな効能があります。社員が、動きはじめることです。
多くの中小企業では、変化を提案すると、現場から戸惑いや反発が返ってきます。
「なぜ、今までのやり方を変えるのか」と。これは、社員が後ろ向きなのではありません。
変える理由が、腹落ちしていないだけです。
ところが、社長が自社の数字を語れるようになると、この空気が変わります。
「なんとなく、こうしたい」ではなく、「この数字がこうだから、だからこうする」と、理詰めで説明できる。
実際、ある社長は、自社の数字がはっきり見えたことで、これまで感覚で伝えていた方針を、
社員に筋道立てて説明できるようになった、とおっしゃっていました。
数字は、社長と社員をつなぐ共通言語です。共通言語があれば、変化を怖がっていた社員も、
少しずつ同じ方向を向きはじめます。新しい挑戦が実を結ぶのは、
そうやって足元が固まってからなのだと思います。
貴社は、自社の「儲かる構造」を数字で説明できますか
一度、静かに問い直してみてください。
自社は、どの商品・どのお客様で、いくら利益を出しているでしょうか。
稼いだお金は、どこへ消えているでしょうか。
それを、社員の方に、ご自分の言葉で説明できるでしょうか。
すぐに答えが出なかったとしても、それは力不足ではありません。
事業の中身と数字が、まだつながっていないというだけのことです。
つなぎ方さえ分かれば、足元は固まり、新しい挑戦も、地に足のついたものに変わります。
もちろん、すべての会社が、いますぐ大がかりなことをする必要はありません。
詰まっている場所は、会社によって違うからです。
利益構造なのか、取引先の偏りなのか、資金繰りなのか、あるいは新規事業への踏み出し方そのものなのか。
まずは、そこを見分けるところからで、十分だと思います。
私の経営相談では、こうした「足元の数字の固め方」も含めて、貴社の現状を一緒に整理していきます。
同じ悩みも、言葉にして話すだけで、驚くほど頭がすっきりするものです。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
▼ご相談フォームはこちら(スマホで簡単入力)▼▼

※ご相談内容に「経営改革ロードマップ」とご記入いただけるとスムーズです。


