「良い商品なのに売れない」の正体― 変えるべきは商品ではなく、最初の一行かもしれません

先日、私が主宰する勉強会「教えてバイ先生の寺子屋」の第5回を開催しました。
テーマは、売れるキャッチコピーです。
なぜ経営の勉強会でコピーライティングを扱ったのか。
理由は単純で、ご相談をいただく会社の多くが、
商品では負けていないからです。
品質もいい。
対応も丁寧。
値段も無茶ではない。それなのに売れない。
この状態が、いちばんもったいない。
同じ商品、同じ値段でも、売れる人と売れない人がいます。
違いは、たいてい言葉だけです。
見出しを読む人は、本文を読む人の5倍
「広告の父」と呼ばれるデイヴィッド・オグルヴィは、
著書『ある広告人の告白』のなかでこう書いています。
平均して、見出しを読む人は本文を読む人の5倍いる。
見出しを書いたとき、あなたは1ドルのうち80セントを使い終えている。
チラシも、ホームページも、営業資料も、構造は同じです。
中身をどれだけ丁寧に作り込んでも、
最初の一行で「自分には関係ない」と判断されれば、その先は読まれません。
多くの会社が、時間の大半を本文にかけています。
商品説明を厚くし、実績を並べ、写真を差し替える。
けれども勝負がついているのは、その手前です。
売れない一行には、共通点があります
ご相談の場でチラシやホームページを拝見していると、
売れていない一行には、はっきりした共通点があります。
主語が、自分になっている。
「当社の強みは、創業40年の実績です」
「◯◯システムを導入しています」
「地域密着で対応いたします」
どれも嘘ではありません。むしろ立派な内容です。
しかし読む側からすると、これは「その会社の話」であって、
「自分の話」ではありません。
人は、自分に関係のない話を読むほど暇ではないのです。
これを、お客様を主語にした形に置き換えます。
「創業40年の実績です」
→「40年分の失敗を、あなたは繰り返さずに済みます」
「◯◯システムを導入しています」
→「毎月3日かかっていた集計が、30分で終わります」
同じ事実です。変えたのは、視点だけです。
売り手の自慢を、相手の得に翻訳する。これがすべての土台になります。
キャッチコピーは、才能ではなく「型」です
「そんな言葉のセンスは自分にはない」とおっしゃる社長は多いのですが、
そこは心配いりません。
売れているコピーは、ほとんどが決まった型の組み合わせでできています。
寺子屋では31の型を配り、そのうち中小企業がすぐ使える5つを重点的に扱いました。
① 悩み解消
型
……お客様の悩みを、そのまま言葉にする。「新規事業でお困りの方へ」
② 失敗回避型
……やりたいけれど怖い、という層に効きます。
「失敗しない新規事業の始め方」
③ 具体数字型(奇数)……ざっくりを具体に変える。奇数のほうが実感が出ます。「利益を残す7つの習慣」
④ よい未来型
……手に入れたあとの景色を見せる。「半年後、資金繰りに悩まない会社に」
⑤ 返金保証型
……買う側のリスクをゼロにする。「成果が出なければ全額返金」
どれも、特別な文才は要りません。
自社の商品を、この型に流し込むだけです。
「経営管理システムです」という一行も、
「返金保証付き 経営管理システム」と一言足すだけで、
受け取られ方が変わります。
AIに書かせるなら、聞き方のほうが大事です
当日は、31の型をすべて組み込んだ指示文(プロンプト)を参加者にお渡しし、
その場で自社のコピーを作っていただきました。
自分の商品情報を打ち込むと、コピーが14本出てきます。
終わったあと、参加者からいちばん多く出た感想が、これでした。
「自分でやるときは、もっとシンプルに打ってしまう。
ここまで細かく指示すると、いいものができるんですね」
AIは、指示の細かさ以上の答えを返してきません。
雑に聞けば、雑に返ってくる。
誰に、何を、どんな場面で使うのかを渡してはじめて、使える言葉が出てきます。
逆に言えば、それさえ渡せれば、
コピーの作業そのものは十分に任せられる時代になりました。
本当の効果は、言葉が変わることではありません
もうひとつ、印象に残った感想があります。
「自分のことは、意外と気づけていない部分がある。
キャッチコピーを考えて、自分ともう一度向き合えました」
これが、コピーづくりの隠れた効能です。
お客様を主語にして一行を書こうとすると、必ず手が止まります。
うちのお客様は誰なのか。その人の一番の悩みは何なのか。
他社にない強みは、数字で言えるのか。
書けないとすれば、言葉の問題ではなく、そこが決まっていないという合図です。
キャッチコピーは、商品を飾る作業のようでいて、
実際には「誰に、何を、いくらで売るのか」を突きつけてきます。
だから私は、これを経営の話として扱っています。
ひとつだけ、注意していただきたいこと
型のなかには、使い方を誤ると信頼を壊すものもあります。
「No.1」「全額返金」「必ず成果が出ます」といった言葉は、
根拠と条件をセットにしなければ使えません。景品表示法の問題もありますが、
それ以前に、一度でも「話が違う」と思われた相手は、二度と戻ってきません。
強い言葉ほど、裏づけとセットで。ここだけは守ってください。
まず、次の60秒から変えてみてください
大がかりな準備は要りません。
名刺交換のときの一言、紹介をお願いするときの一言、ホームページの見出し。
まずはそのうちのひとつを、お客様を主語にした一行に書き換えてみてください。
それだけで、相手の反応は変わります。
そのうえで、もし一行が書けないとお感じになったなら、
それは言葉ではなく、事業の中身を整理するタイミングだということです。
私の経営相談では、決算書の数字と事業の中身を突き合わせながら、
「どの商品を、誰に、いくらで売るのか」を一緒に整理していきます。
頭の中にあるモヤモヤも、言葉にして話すだけで驚くほどすっきりするものです。
自社を一行で言い表せない、という段階からで構いません。
どうぞお気軽にご相談ください。
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