なぜ、東横インは「どこも同じ部屋」なのか― 中小企業を静かに強くする「金太郎飴経営」

2026/08/22 経営

先日、あるテレビ番組で、ビジネスホテル「東横イン」の特集を目にしました。
今年2月、東横インは高知県に出店し、47都道府県すべてへの進出を達成したそうです。

その最後の一県が、私がいま暮らす高知でした。
1986年に東京・蒲田の一号店から始まり、いまや客室数は8万を超える、日本最大級のホテルチェーンです。

番組を見ていて、いちばん驚いたのは「部屋」でした。
全国どこの東横インに泊まっても、部屋の形も、広さも、ベッドや備品の配置も、ほとんど同じ。
番組では、これを「金太郎飴のような部屋」と紹介していました。

「同じ」であることが、なぜ強いのか

普通に考えれば、どこも同じ部屋では、お客様に「つまらない」と思われそうです。
ところが、番組で紹介されていたお客様の声は、まったく逆でした。
「チェックインして、荷物を置いて、いつものものを取り出すまでが、どこに泊まっても全部同じ。
もう我が家のようだ」。同じだから迷わない。同じだから安心する。

出張で使うビジネスマンにとっては、この「余計なことを考えなくていい」ことこそが価値なのだ、
というわけです。

強さは、それだけではありません。
部屋を揃えれば、備品はまとめて安く仕入れられます。
内装や電気工事まで自社グループが手がけ、同じ工事を「8万回」繰り返してきたからこそ、
工期は短く、コストは下がる。地価の高い京都駅ではなく、あえて数駅離れた街に出す。
そうやって切り詰めた分を、「原則ワンプライス」という、いつ泊まっても値段が変わらない安心にして、
お客様に返しているのです。

同じスーツを着続けたスティーブ・ジョブズのように、「どうでもいい違い」を消して、
本当に大事なところにだけ力を注ぐ。金太郎飴に見えたやり方は、実は、極限まで考え抜かれた戦略でした。

これは、大企業だけの話でしょうか

私は、中小企業にこそ効く話だと感じました。
なぜなら、多くの中小企業は、これと真逆の景色になっているからです。

あの人にしか分からない。あの人が休むと現場が回らない。
同じ仕事なのに、進め方が人によってバラバラ。いわゆる「属人化」です。

東横インの本当の強さは、部屋を揃えたことそのものではなく、
「同じにできるところを、徹底的に同じにした」という一点にあります。仕入れも、工事も、
オペレーションも標準化し、そうして生まれた余力を、お馴染みのお客様へのおもてなしという、
機械には代えられない部分に注いでいる。

標準化とは、味気なくすることではありません。
むしろ逆で、いちばん力を入れるべきところに集中するために、それ以外のばらつきを消していく営みです。
47都道府県、最後の高知まで同じ品質を届けられるのは、これができているからにほかなりません。

貴社の「金太郎飴」は、どこにありますか

一度、静かに考えてみてください。
貴社の仕事の中で、本当は「同じやり方」に揃えられるのに、
担当者ごとの我流のまま放置されている工程は、どれくらいあるでしょうか。
その一つを標準化できれば、そこに費やしていた時間と神経は、お客様と向き合う時間に変わります。

私の経営相談では、こうした「揃えるべきところ」と「人にしかできないところ」の切り分けも含めて、
貴社の現状を一緒に整理していきます。
同じ悩みも、言葉にして話すだけで、驚くほど頭がすっきりするものです。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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