カルビー「白黒ポテチ」に学ぶ、逆境を”武器”に変える経営の在り方

2026/07/08 経営

話題の”真っ黒なポテチ”、その正体

2026年5月、スーパーやコンビニの棚に、見慣れない真っ黒なポテトチップスが並び始めました。
新聞・テレビ・SNSで一気に話題になった、カルビーの「白黒パッケージ」です。

事実を整理すると、こうです。

カルビーは5月12日、ポテトチップスやかっぱえびせん、
フルグラなど計14商品のパッケージを白黒に変更すると発表し、
25日の週から店頭で順次切り替えると説明しました。

背景にあるのは、原料そのものの不足ではなく”包装”の問題でした。
中東情勢を機に石油化学製品の基礎原料であるナフサの調達が難しくなり、
印刷インクの溶剤や樹脂が品薄になったことが理由です。

ポイントは、これが値上げではなく別の対応だったこと。
うすしおの赤、のりしおの黄、コンソメパンチのクリーム色とカラフルだったパッケージが、
すべて白黒に切り替わりました。
色を削ってでも供給を止めない、という判断です。

普通なら”マイナス”の話。でも、そこで終わらなかった

冷静に考えれば、これは後ろ向きなニュースのはずです。
「原料の調達が不安定なので、パッケージを地味にします」
聞こえだけなら、苦しい台所事情の告白でしかありません。

ところが、結果はまったく逆に転がりました。

カラフルな商品が並ぶ売り場で、真っ黒なパッケージはむしろ強烈に目立つ。
私が見たお店でも、過去のカラフルな商品と積み上げて、
「白黒の新パッケージ」を思いっきり前面に出して売っていました。

専門家の見立ても、これを裏づけています。
ブランドは広告費をかけたときだけでなく、社会の文脈の中で語られたときに強くなる。

マーケティングの世界では、これを”他と違うから記憶に残る”という視認性の効果として説明します。
無名ブランドが白黒にしても地味になるだけですが、誰もが知るカルビーが白黒になると、
その違和感そのものがニュースになるわけです。

ピンチが、そのまま”最高の宣伝”になった

この一件は、経済メディアでも「勝者はカルビー」と評されました。
一般消費者から専門家、政府までを巻き込んで議論が起き、話題づくりは大成功。
しかも原因は国際情勢であってカルビーに非はないため、批判も限定的にとどまったという構図です。

発売前から「白黒ってマジ?」「どんなデザイン?」という声が広がり、
生活者が自らパッケージを作って投稿するなど、いわば無料の口コミが大量に生まれました。

影響は他社にも波及しています。
カルビーの白黒包装をきっかけに「ナフサショック」は話題沸騰し、
コンビニ大手がプライベートブランドの白黒化を検討するなど、業界全体に広がりを見せました。
一社の”苦肉の策”が、時代を象徴するキーワードにまでなったのです。

ここから学べること:制約は”言い訳”にも”設計”にもなる

私がこの話でいちばん唸ったのは、マーケティングの上手さそのものではありません。
逆境が来たときの、頭の切り替え方です。

専門家はこう指摘しています。多くの企業は制約を言い訳にするが、強い企業は制約を設計に変える。
原材料が足りない、人手が足りない、予算が足りない、時間がない。

理想的な条件がそろうことなんて、経営ではまずありません。
同じ「足りない」を前にして、うなだれるのか、面白がるのか。
その一点で、道は大きく分かれていきます。

そしてこれは、大企業だけの話ではないと思うのです。
むしろ、私たち中小企業こそ学ぶべき視点です。
規模が小さいほど、逆境は日常的にやってきます。

だからこそ、その一つひとつを「どう料理してやろうか」と受け取れるかどうかが、
続く会社と消えていく会社を分けていく。

逆境は、避けられません。
けれど、受け取り方はいつでも自分で選べます。

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