最低賃金1500円は「もう決まった未来」─潰れる会社と、伸びる会社を分けるもの

「いつか」ではなく「もう決まった」話になった
2026年6月30日、高市内閣として初めての「骨太方針2026」の原案が示されました。
最低賃金について、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に、
全国平均1500円へ引き上げると明記されています。
今の全国加重平均は1121円(2025年10月改定)。あと380円、およそ1.3倍の引き上げです。
「380円も上がるの?」と身構えるかもしれません。
でも、冷静に計算してみてください。
毎年3〜4%ずつの引き上げが続けば、十分に届く水準です。
しかも直近2年は+5.0%(2024年度)、+6.2%(2025年度)と、
それを上回るペースで上がり続けています。
つまりこれは、「いつか来るかもしれない話」ではありません。
もう決まった未来として、今から逆算して備えるべきテーマなのです。
なぜ、ここまで賃金が上がるのか
そもそも、なぜ国はここまで賃上げを急ぐのか。
ここを理解しておくと、対応の姿勢が変わります。
理由は大きく2つです。ひとつは、深刻な人手不足。
少子高齢化で働き手が減り続けるなか、賃金を上げなければ人を確保できない局面に入っています。
もうひとつは、国際比較での見劣りです。
アメリカ・イギリス・ドイツ・オーストラリアといった主要国の最低賃金はいずれも時給2000円を超え、
日本は韓国とほぼ同水準にとどまっています。
海外から人を呼び込むどころか、流出しかねない水準なのです。
骨太方針2026も、賃上げを「単なる分配」ではなく、人材を惹きつけ、消費を広げ、
投資を促す「供給力強化」そのものと位置づけています。
国の本気度は、ここに表れています。
賃上げは、もう景気の話ではなく、国の成長戦略の起点なのです。
半数以上の会社が「対応できない」と答えている
とはいえ、現場の危機感は本物です。
ある調査では、最低賃金が全国平均1500円まで上がった場合、
「対応できないと思う」と答えた企業が56.3%にのぼりました。
業種別では小売業71.0%、飲食・宿泊業64.0%と、人件費比率の高い業種ほど不安が濃くなっています。
理由は「人件費に充てる予算が足りない」「売上が追いつかない」「値上げができない」。
どれも、痛いほどわかります。
私自身、このニュースを見て昔の自分を思い出しました。
「スタッフに、もっと払ってあげたい」。その気持ちは、ずっとありました。
でも当時は会社の規模も大きく、一人ぶん上げると決めれば、全員ぶん。
インパクトが大きすぎて、「払いたいのに、出せない」。
その板挟みが、正直しんどかったのを覚えています。
それでも「今こそ出すべき」だと思う理由
でも今なら、はっきり思います。今こそ、出していくべきだと。
理由はシンプルで、いまが採用難だからです。「募集すれば来る」時代は、もう終わりました。
そんな中で、辞めてほしくない人、「この人にはいてほしい」と心から思う人には、
ちゃんと配慮し、ちゃんと報いる。それをケチった会社から、人は文句ひとつ言わず、静かにいなくなります。
しかも影響は時給だけにとどまりません。
最低賃金が上がれば、残業代も社会保険料も連動して増えます。
仮に月1万円の昇給でも、100人規模なら賞与を含めて年1500万〜2000万円のインパクト。
「うちには関係ない」で済む会社は、ほとんどありません。
問われているのは金額ではなく、「在り方」
ここまで読んで、「じゃあどうすればいいんだ」と思うはずです。答えを言う前に、ひとつだけ整理させてください。
最低賃金が1500円になること自体は、本当の問題ではありません。問われているのは──「その金額を、堂々と払える会社になれるかどうか」。経営者の在り方の話です。
もちろん、自社の利益構造から見て、どこまで上げられるかの検証は欠かせません。感情だけで上げれば会社が傾きます。でも「上げられない」を出発点にするのか、「上げられる会社になる」を出発点にするのか。この立ち位置の違いが、5年後の決定的な差になります。
「払える会社」になるための、3つの稼ぐ力
払える力とは、つまり稼ぐ力です。稼ぐ力は、大きく3つの方向からつくれます。
1つ目は、価格転嫁。上がったコストを、正当に価格へ乗せる交渉力です。
国も価格転嫁対策を強化しており、下請け構造にいる会社ほど、ここを避けて通れません。
2つ目は、生産性の向上。同じ人数で、より多くの価値を生む仕組みづくりです。
国は中小企業向けに、生産性向上や設備投資を後押しする支援(業務改善助成金など)を用意しています。
使える制度は、遠慮なく使うべきです。
3つ目は、単価と付加価値を上げること。
安く数を売るモデルから、高くても選ばれる理由をつくるモデルへ。
ここが、いちばん時間はかかるけれど、いちばん本質的です。
決まった未来から、逆算する
賃上げは、待っていれば降ってくる災害ではありません。
すでに見えている未来です。見えているなら、逆算して先に手を打った会社が勝ちます。
だからこそ、いまやるべきは、目先の人件費に頭を抱えることではなく、
5年後に「堂々と払える会社」になるための経営戦略を、今日から組み立てることです。
決まった未来から逆算して、稼ぐ力をつけていきましょう。
それが、これからの経営者に求められる覚悟だと、私は思っています。
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