家族を役員にする「所得分散」スキームの節税効果
個人事業主から法人化(会社設立)する大きなメリットの一つに、
「家族へ給与(役員報酬)を支払いやすくなる」という点があります。
事業を手伝ってくれている配偶者や親族を役員に迎え、
会社の利益を「家族の給料」として分散させることで、
世帯全体で支払う税金を大きく減らすことができるのです。
本記事では、この「所得分散」による節税のメカニズムと、
実行する際に絶対に気をつけるべき税務上の注意点や社会保険料の壁について解説します。
1. なぜ「所得分散」で税金が安くなるのか?
個人の所得にかかる「所得税」は、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる
「累進課税」という仕組みをとっています。
最高税率は住民税と合わせると約55%にも達します。
そのため、社長1人で会社の利益をすべて役員報酬として受け取ると、
高い税率が適用されてしまい、手元に残るお金が少なくなってしまいます。
しかし、これを家族に分散して支払うとどうなるでしょうか。
例えば、社長1人で2,000万円の役員報酬を取るよりも、
社長と配偶者の2名で1,000万円ずつ、あるいは親族4名で500万円ずつ取った方が、
一人ひとりの所得税率が下がり、世帯合計で支払う税金は安くなります。
これが「所得分散」を利用した節税スキームの基本です。
2. 要注意!「名ばかり役員」は税務調査で否認される
所得分散は強力な節税対策ですが、安易に行うと税務調査で厳しい指摘を受けることになります。
家族へ給与を支払う場合の絶対条件は以下の通りです。
① 勤務実態があるか
当然のことですが、全く働いていない家族に対して給与を支払うことはできません。
必ずしもオフィスへ毎日出社する必要はありませんが、
自宅での事務作業など、何らかの「勤務実態の証明」が必要です。
② 労働に見合った適正な金額か
支払う給与の金額が、その家族の業務内容に見合っているかどうかも厳しく見られます。
例えば、週に数回の伝票整理しかしていない親族に対し、
毎月1,000万円もの高額な給与を支払ったような極端なケースは、
明らかに不適切な金額として税務調査で否認(経費として認められない)されるリスクが高くなります。
3. 「扶養の壁」と社会保険料の負担増
家族へ給与を支払う際に、もう一つ忘れてはならないのが「扶養控除」と「社会保険料」の問題です。
配偶者などに給与を出す場合、その金額が高額になると、
社長自身の税金計算上の「扶養」から外れなければならなくなります。
さらに、年間の支給額が「130万円」を超えると、
家族自身で社会保険(健康保険や厚生年金)に加入するか、
会社の社会保険に加入する必要が生じ、新たな社会保険料の負担が発生します。
「税金は安くなったけれど、社会保険料の負担が増えて、結局世帯の手取りが減ってしまった」
という事態にもなりかねません。
まとめ
家族を役員にする所得分散スキームは効果的ですが、以下のポイントをクリアする必要があります。
- 累進課税を回避するために、家族に報酬を分散して税率を下げる。
- 勤務実態と、業務内容に見合った適正な報酬額を設定する。
- 130万円の壁など、社会保険料や扶養控除への影響を計算する。
安易に役員報酬を決めてしまうと逆に損をする可能性があるため、
実行する前には税理士などの専門家に綿密なシミュレーションを依頼し、
最も手取りが多くなるベストな金額設定を見つけることをおすすめします。
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