なぜ今、病院の倒産が急増しているのか—「7割が赤字」の時代を読み解く
実は今、病院の倒産が急増しています。
東京商工リサーチの調査によると、病院の倒産件数は2023年の80件から2024年には106件へと増加。
さらに、ベッド数が一定以上ある病院のおよそ7割が赤字とも言われています。
「医療は安定した業界」というイメージとは、ずいぶん違う現実が広がっています。
なぜ、人の命を支える病院がこれほど経営に苦しんでいるのでしょうか。

赤字の正体は「コスト構造のアンバランス」
最大の理由は、収入と支出のバランスが崩れていることです。
人件費や電気代、高度な医療機器、入院患者の食事代まで、あらゆる原価は年々上がり続けています。
ところが収入の柱である診療報酬は国が定めるため、病院が自由に価格を上げることはできません。
原価だけが膨らみ、売上は据え置き。これでは利益が残りにくいのも当然です。
一般の中小企業なら、赤字のときは経営者が自らの報酬を削ってでも会社を立て直します。
しかし医療の世界では、価格を自分で決められないぶん、こうした調整の余地も限られているのです。
コロナを境に変わった「受診の習慣」
追い打ちをかけたのが、人々の受診行動の変化です。
コロナ禍では「感染が怖いから、むしろ病院に行きたくない」という心理が広がり、
ちょっとした不調なら市販薬で様子を見る人が増えました。
国の方針も入院中心から通院中心へとシフトし、入院患者そのものを減らす流れになっています。
ベッドが空けば稼働率は下がり、入院収入に頼ってきた病院ほど経営は厳しくなります。
「人が来ない」ことが、そのまま赤字につながっているのです。
進む「地方と都市の二極化」
もう一つ見逃せないのが、地域による格差です。
人口が減る地方では、そもそも患者の数が少なく、医師も集まりにくくなっています。
若い医師の多くは研修で都市部に出たまま戻らず、
より良い労働環境や収入を求めて都心の病院や美容医療などへ移っていきます。
結果として、患者が集まる都市部の人気病院と、
人も収入も先細る地方の赤字病院という二極化が進んでいます。
倒産する病院に地方が多いのは、こうした構造が背景にあるのです。
それでも黒字を出す病院の共通点
とはいえ、すべての病院が苦しいわけではありません。
地方にありながら黒字を出し、その地域で高額納税者になっている院長も実在します。
共通点は、医療の腕だけでなく「経営」と「ファンづくり」ができていること。
「この先生に診てもらいたい」「ここなら安心」と思ってもらえる病院には人が集まり、
口コミも評判も自然に育っていきます。結局のところ医療もサービス業であり、
選ばれ続ける仕組みを持てるかどうかで明暗が分かれるのです。
これからの病院に求められること
医師は本来、長い時間をかけて医学を学んできた“職人”であって、経営の専門家ではありません。
だからこそ、診療は医師に任せ、経営はマネジメントのプロが担う。
そうした役割分担が、これからの病院にはますます求められていくはずです。
一方で、利益を優先しすぎる経営に偏れば、必要のない治療や長期入院を生む危うさもあります。
地域に欠かせない医療を守るには、診療報酬のあり方を含め、行政と現場の両面からの見直しが問われています。
経営の視点を持つこと。それは決して「お金儲け」だけの話ではなく、地域の医療を未来へ残すための、
避けて通れないテーマなのです
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