【経営参謀ラジオ #029】賃上げできる会社とできない会社—決定的な3つの違いと「労働分配率」という経営の物差し
「賃上げしたいけど、うちには無理」
そう思っている経営者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
高知市の中小企業に社外CFOとして伴走するサンブレイン税理士事務所のバイ(馬醫)が、
経営参謀ラジオ第29回で切り込むのは「賃上げできる会社とできない会社の決定的な違い」です。
2025年の平均賃上げ率は5%超、大企業の初任給30万円も珍しくなくなった今、
中小企業が生き残るために何を変えるべきかを明確に示します。
賃上げできない会社に共通する3つの病
① 売上市場主義——「売上さえ上がればいい」という落とし穴
売上を追いかけるあまり、価格を下げて受注を取りに行く経営スタイルです。
ある建設業の企業が「100億企業を目指す」と売上重視で安値受注を続けた結果、
仕事量は増えたのにクレームが増加し、社員が疲弊してやめていったという実例があります。
売上は増えても粗利が薄く、賃上げどころか利益も出ない構造になっていました。
② 価格転嫁できていない
仕入れコストが上がっているのに、販売価格に転嫁できていない企業が中小企業の約6割を占めます。
粗利が削られた状態では人件費を増やす余力がなく、賃上げは「不可能」に映ります。
③ 賃金を「コスト」と見ている
人件費を削るべきコストと捉えていると、賃上げは経営の敵になります。
しかし本来、人への投資は定着率を高め、採用コストを下げ、生産性を向上させる「未来への投資」です。
この認識のズレが、賃上げできない会社の根本原因です。
賃上げできている会社が見ている「粗利」という数字
賃上げを実現している会社の共通点は、売上ではなく粗利(あらり)を経営の中心に置いていることです。
売上から変動費(売上に連動して増減する費用)を引いたものが粗利。
この粗利を増やすことを第一の目標として設計している会社は、値下げ競争に巻き込まれず、
賃上げの原資を生み出せます。
先ほどの建設業の事例でも、売上を絞り込んで単価を上げ粗利率を改善した結果、
売上は減ったのに利益が増え、1件あたりの粗利が大幅に向上しました。
「数を減らして儲かる会社」への転換が、賃上げへの道を開いたのです。
「労働分配率」—賃上げ設計に使う最重要指標
賃上げできている会社が必ず管理しているのが「労働分配率」です。
計算式:人件費 ÷ 粗利 × 100
例えば粗利が100万円で人件費が50万円なら、労働分配率は50%です。
これが80%になると、粗利のほとんどを人件費が占めてしまい、
その他の固定費(減価償却費・消耗品・広告費など)を払うと赤字になりかねません。
目安として、労働分配率60%以下を維持できると健全な経営に近づきます。
理想は50%前後ですが、業種によって異なります。
労働集約型のビジネスは高くなりやすく、IT・コンサルなど粗利率の高い業種では低く抑えやすい傾向があります。
この数字を定期的にチェックし、「粗利に対して人件費をどの割合で設計するか」を意識することが、
賃上げできる会社への第一歩です。
賃上げを後押しする制度も活用する
賃上げは企業努力だけでなく、国や自治体の制度も活用できます。
賃上げ促進税制:前年から賃上げを行った場合、増加分の一定割合を法人税から直接控除できます。
税金から引けるため、メリットが大きい制度です。
業務改善助成金:最低賃金を引き上げ、設備投資と組み合わせることで、
一定要件を満たせば助成金が受け取れます。
これほど手厚い支援が用意されているということは、
国全体として「賃上げをマストにしていく」という方向性の表れです。
賃上げは「負の連鎖」を「正の連鎖」に変える
賃上げは怖い。しかし賃上げしなければもっと怖い結果が待っています。
賃上げ→定着率向上→採用コスト削減→1人あたり生産性向上→粗利増加→さらなる賃上げ
この正の連鎖を作れた会社が、2030年に向けて選ばれ続ける企業になります。
稼ぐ数字を作り、賃上げして、さらに選ばれる会社へ。
この好循環の設計こそが、社外CFOが伴走する経営改革の核心です。
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