「責任が増えるなら、今のままでいいです」― 管理職が育たない本当の理由

2026/10/20 経営

「責任が増えるなら、今のままでいいです」

社員にそう言われた経験は、ないでしょうか。

先日、人事労務の講座でこんな事例が出てきました。

社員10名ほどの会社。

社長は営業力で、ここまで会社を伸ばしてきました。

そろそろ仕事を任せたい。管理職を育てたい。

ところが社員からは、冒頭の言葉が返ってくる。

心当たりのある社長は、多いのではないでしょうか。

手当をつけても、動かない理由

ここで多くの会社がやるのが、手当です。

役職手当をつける。給料を上げる。

けれど、たいてい動きません。

不満をなくす要因と、やる気を生む要因

講座で教わったのが、ハーズバーグの考え方でした。

人の働く気持ちを左右する要因は、2つに分かれます。

不満をなくす要因

  • 給与
  • 労働条件
  • 職場環境
  • 上司との関係
  • 会社の方針

これらは、悪いと不満が出ます。

けれど、良くしたところでやる気にはなりません。

しばらくすると「当たり前」になるからです。

やる気を生む要因

  • 達成
  • 承認
  • 仕事そのもの
  • 責任
  • 昇進
  • 成長

やり遂げた実感。

見てもらえているという感覚。

任されている範囲。

去年の自分よりできるようになった手応え。

人が動くのは、こちらです。

「責任」が、罰に見えている

ここで、冒頭の言葉に戻ります。

責任は、本来ならやる気を生む側の要因です。

それなのに「増えるなら今のままでいい」と言われるのはなぜか。

責任が、罰として受け取られているからです。

  • 任せたのに、口を出す
  • うまくいっても、何も言わない
  • 失敗したときだけ、呼ばれる

これでは、誰も手を挙げません。

講座で話し合った、3つのテーマ

講座では、このあとグループで話し合いました。

テーマは3つです。

  1. 「わくわくする管理職」とは何か
  2. 「成長を実感できる会社」とは何か
  3. 会社の方向性を、どう決めるか

話しているうちに、3つが1本につながりました。

見えないものには、向かえない

管理職になりたくない理由は、責任が重いからではありません。

その先に何があるのかが、見えないからです。

この会社は、どこへ行くのか。

そこで自分は、何を任されるのか。

できるようになったら、どうなるのか。

ここが見えていれば、責任は荷物ではなく、出番になります。

成長の実感も、同じ

成長を実感できるかどうかも、同じ構造です。

目指す場所が決まっていなければ、進んだのかどうかも分かりません。

だから、手前に経営計画がある

ここまで来ると、最初にやることが見えてきます。

経営計画です。

  • 5年後、会社をどこへ持っていくのか
  • そのために、どの事業を伸ばすのか
  • 誰に、何を任せるのか

これを決めるのが、社長の仕事です。

計画がないまま「主体的に動いてほしい」と言っても、どこへ動けばよいのかが分かりません。

順番を間違えない

整理すると、順番はこうなります。

  1. 経営計画で、会社の方向を決める
  2. 任せる範囲を、言葉にする
  3. できたときに、きちんと認める
  4. そのうえで、処遇に反映する

給料の話は、最後です。

逆の順番で進めると、手当だけが増えて、人は育ちません。

おわりに

貴社の5年後を、社員は何人言えるでしょうか。

言える人が少ないとしたら、管理職が育たない原因は、本人のやる気ではなく、行き先が共有されていないことかもしれません。

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