「責任が増えるなら、今のままでいいです」― 管理職が育たない本当の理由
「責任が増えるなら、今のままでいいです」
社員にそう言われた経験は、ないでしょうか。
先日、人事労務の講座でこんな事例が出てきました。
社員10名ほどの会社。
社長は営業力で、ここまで会社を伸ばしてきました。
そろそろ仕事を任せたい。管理職を育てたい。
ところが社員からは、冒頭の言葉が返ってくる。
心当たりのある社長は、多いのではないでしょうか。
手当をつけても、動かない理由
ここで多くの会社がやるのが、手当です。
役職手当をつける。給料を上げる。
けれど、たいてい動きません。
不満をなくす要因と、やる気を生む要因
講座で教わったのが、ハーズバーグの考え方でした。
人の働く気持ちを左右する要因は、2つに分かれます。
不満をなくす要因
- 給与
- 労働条件
- 職場環境
- 上司との関係
- 会社の方針
これらは、悪いと不満が出ます。
けれど、良くしたところでやる気にはなりません。
しばらくすると「当たり前」になるからです。
やる気を生む要因
- 達成
- 承認
- 仕事そのもの
- 責任
- 昇進
- 成長
やり遂げた実感。
見てもらえているという感覚。
任されている範囲。
去年の自分よりできるようになった手応え。
人が動くのは、こちらです。
「責任」が、罰に見えている
ここで、冒頭の言葉に戻ります。
責任は、本来ならやる気を生む側の要因です。
それなのに「増えるなら今のままでいい」と言われるのはなぜか。
責任が、罰として受け取られているからです。
- 任せたのに、口を出す
- うまくいっても、何も言わない
- 失敗したときだけ、呼ばれる
これでは、誰も手を挙げません。
講座で話し合った、3つのテーマ
講座では、このあとグループで話し合いました。
テーマは3つです。
- 「わくわくする管理職」とは何か
- 「成長を実感できる会社」とは何か
- 会社の方向性を、どう決めるか
話しているうちに、3つが1本につながりました。
見えないものには、向かえない
管理職になりたくない理由は、責任が重いからではありません。
その先に何があるのかが、見えないからです。
この会社は、どこへ行くのか。
そこで自分は、何を任されるのか。
できるようになったら、どうなるのか。
ここが見えていれば、責任は荷物ではなく、出番になります。
成長の実感も、同じ
成長を実感できるかどうかも、同じ構造です。
目指す場所が決まっていなければ、進んだのかどうかも分かりません。
だから、手前に経営計画がある
ここまで来ると、最初にやることが見えてきます。
経営計画です。
- 5年後、会社をどこへ持っていくのか
- そのために、どの事業を伸ばすのか
- 誰に、何を任せるのか
これを決めるのが、社長の仕事です。
計画がないまま「主体的に動いてほしい」と言っても、どこへ動けばよいのかが分かりません。
順番を間違えない
整理すると、順番はこうなります。
- 経営計画で、会社の方向を決める
- 任せる範囲を、言葉にする
- できたときに、きちんと認める
- そのうえで、処遇に反映する
給料の話は、最後です。
逆の順番で進めると、手当だけが増えて、人は育ちません。
おわりに
貴社の5年後を、社員は何人言えるでしょうか。
言える人が少ないとしたら、管理職が育たない原因は、本人のやる気ではなく、行き先が共有されていないことかもしれません。
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