社長が現場に立ち続ける会社は、なぜ止まるのか-「手放す」と決めた社長の、二日間

先日、高知で開いている二日間の経営合宿に、
地元・高知で飲食店を経営されている社長がご参加くださいました。
二日目の終わりに、こんなことをおっしゃいました。
「自分が自ら現場に立つことを、やめたいなと思いました」
たまには立ってもいい。けれども、これからは幹部社員に任せる。
そしてAIをはじめとした道具を使って、自動化できるところは自動化していく。
そう続けられました。
飲食業の社長が現場に立つのは、悪いことではありません。
むしろ、現場に立てる社長は強い。
お客様の顔が見え、味も、スピードも、スタッフの動きも、自分の目で分かるからです。
それでも、この社長は「やめる」と決められました。
今回は、その判断の意味を書いてみたいと思います。
手放すのは、逃げではありません
社長が現場に立っている間、会社は動いています。
売上も立ちます。何も問題は起きていないように見えます。
ただ、その時間、止まっているものがあります。社長にしかできない仕事です。
来期どこで戦うのかを決めること。誰にいくら投資するのかを決めること。
銀行に何を説明するのかを考えること。そして、社員に会社の方向を語ること。
これらは、幹部社員に任せられません。社長しか決められないからです。
現場に立っている限り、会社はいまの延長線上でしか進みません。
回ってはいるけれど、次に行かない。
多くの中小企業が伸び悩む理由は、社長の能力ではなく、社長の時間の使い方にあります。
ですから「手放す」というのは、楽をすることではありません。
社長にしかできない仕事に、時間を移すということです。
これは前に進むための判断であって、後ろに下がる判断ではありません。
もう一つ、この社長がおっしゃったことがあります。
「社員に語ることで、会社も社員も変わることができる」
現場に立っている社長は、指示は出せますが、語る時間が取れません。
手放すことで初めて、語る時間が生まれます。
計画は、発表する日を決めた瞬間に動き出します
経営計画をつくったことのある社長は、たくさんいらっしゃいます。
ところが、その計画が本当に動き出す会社は、そう多くありません。
違いはどこにあるか。私は、社員に発表する日を決めているかどうかだと思っています。
この社長は、合宿の場で日付を決められました。
今月二十八日、お店を休んで店長会議を開く。そこで経営計画を発表する。
だから、その前日までに仕上げる。
これだけで、計画の性質が変わります。誰にも見せない計画は、いつまでも直せます。
直せるということは、いつまでも終わらないということでもあります。
人前で発表すると決めた瞬間に、計画は「いつかやるもの」から「やるもの」に変わります。
そして、発表を前提にすると、内容そのものも変わります。
社員の顔を思い浮かべながら書くからです。この数字を、店長たちの前で説明できるだろうか。
そう自問しながら書いた計画は、自然と根拠のあるものになっていきます。
計画の質を上げる一番簡単な方法は、実は締切を先に決めることなのだと思います。
根拠のある数字は、銀行のためだけのものではありません
合宿の最後に、この社長はこうもおっしゃいました。
「根拠のある数字を、ちゃんと示す。これは銀行だけじゃなくて、社員に対してもそうやと思います」
私は、この言葉にいちばん唸りました。
経営計画は、どうしても銀行向けにつくられがちです。
融資のときに求められるからです。
けれども、根拠のある数字を最も必要としているのは、実は社員のほうです。
数字の根拠が示されない会社では、社員が理由を推測で埋めます。
なぜ給料が上がらないのか、なぜあの店に投資したのか、なぜ今年はこの目標なのか。
悪意ではなく、根拠がないから、そう考えるしかないのです。
私はこれを避けるために、自社の数字を社員に説明できる状態にしておく
「ガラス張り経営」をおすすめしています。
そして、根拠を説明できる社長は迷いません。
社員に説明できるということは、自分自身が納得しているということだからです。
腹落ちしていない計画は、口に出した瞬間に自分で分かります。
理念についても、同じことをおっしゃっていました。
「上から見せるんじゃなくて、みんなが共感できる言葉に変えたい」
理念は、掲げるものではなく、共有されるものです。
壁に貼ってあるだけの立派な言葉より、社員が現場で思い出せる短い一言のほうが、
会社を動かします。この社長は「できないことに、
まずできる方法を考えよう」という言葉を大切にされていました。
飾りのない、現場の言葉です。こういう言葉こそが、理念として機能するのだと思います。
貴社で、社長にしかできない仕事は何でしょうか
一度、静かに考えてみてください。
先週一週間、社長が使った時間のうち、
社長にしかできない仕事に充てられたのはどれくらいだったでしょうか。半分を超えていたでしょうか。
もし答えに詰まったとしても、それは弱点ではありません。
手放せるものが、まだ手元に残っているというだけです。
裏を返せば、時間が増える余地がそれだけあるということでもあります。
その次に、こう問い直してみてください。
いまの経営計画を、社員の前で発表する日は決まっているでしょうか。
その数字の根拠を、ご自身の言葉で説明できるでしょうか。
私の経営相談では、こうした「社長の時間の使い方」も含めて、貴社の現状を一緒に整理していきます。
同じ悩みでも、言葉にして話すだけで頭がすっきりするものです。
気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

※ご相談内容に「経営改革ロードマップ」とご記入いただけるとスムーズです


