その値段は、どうやって決めましたか― 1杯1万5,000円のラーメンが教えてくれる「適正価格」の話

2026/09/15 経営

北海道のニセコエリアにあるラーメン店で、味噌ラーメンが3,000円、
カニラーメンが1万5,000円で売られている、という話をご存じでしょうか。

京都では、350年以上続く酒蔵を見学し、日本酒を味わうツアーが、ひとり5万円。
世界中の富裕層が、プライベートジェットで訪れているそうです。

多くの方は、まず「高い」と感じられると思います。私もそう思いました。
けれども、これらはいずれも実際に売れています。買う人がいて、商売として成立している。

昨年の訪日外国人観光客数は4,000万人を突破し、観光消費額は9.6兆円に達する見込みだといいます。
この数字の裏側で起きているのは、単なる観光ブームではありません。
「値段の付け方」そのものが変わってきている、ということです。

「高すぎる」は、誰の物差しでしょうか

1万5,000円のカニラーメンを「高すぎる」と感じるとき、
私たちは無意識に、自分の財布を基準にしています。
ふだん800円のラーメンを食べている人間の物差しです。

しかし、値段を決めるのは売り手の都合でも、私たちの感覚でもありません。
買う人がその価値に納得して支払うかどうか、それだけです。
買う人がいるなら、それが適正価格ということになります。

厳しい言い方になりますが、「うちの商品にそんな値段は付けられない」という言葉の多くは、
商品の問題ではなく、売り手側の思い込みの問題です。

中小企業の値段は、たいてい二つのどちらかで決まっている

これまで多くの会社の数字を拝見してきて、価格の決め方はおおむね二種類に分かれます。

ひとつは、原価に少し上乗せするやり方。
材料費や人件費を積み上げ、そこに「これくらいは欲しい」という利益を足す。
計算としては正しいのですが、これは徹頭徹尾、自社の都合です。
お客様が何に価値を感じているかは、一切考慮されていません。

もうひとつは、近所の相場に合わせるやり方。
同業他社がいくらでやっているか、地域の相場はどうか。
こちらは他社の都合です。競合が安売りを始めれば、それに引きずられるしかなくなります。

どちらにも共通して欠けているのが、お客様の存在です。
値段の話をしているのに、肝心の「買う人」がどこにもいない。
ここに、利益が残らない構造の入り口があります。

値段が先ではなく、「誰に何を売るか」が先

ニセコのラーメンも、京都の酒蔵ツアーも、はじめに値段があったわけではないはずです。

冬の三か月に世界中から人が集まるニセコで、その体験の一部としてラーメンを食べる人。
350年続く蔵で、造り手から直接話を聞き、その場でしか飲めない酒を味わいたい人。
まず「誰に、何を、どのように届けるか」が決まっていて、値段はその結果として付いています。

順番が逆になっている会社は、値上げを検討するたびに怖くなります。根拠がないからです。
「上げたらお客様が離れるのではないか」という不安は、
正確には「なぜこの値段なのかを説明できない」という不安です。
だから相場に戻る。そしてまた利益が残らない。この繰り返しが、何年も続いてしまいます。

価格は、ひとつである必要もない

もう一点、今回の観光の話には重要な示唆があります。
京都市は今月から、宿泊税の上限をこれまでの1,000円から1万円へと引き上げました。
さらに市長は、市バスの運賃について、市民とそれ以外で差を設ける「市民優先価格」を
2027年度中に導入する方針を明らかにしています。

海外では、地元住民価格と観光客価格を分けることは珍しくありません。
日本では「不公平ではないか」という声も上がりますが、これは差別ではなく、
誰を優先するかを決めたというだけの話です。

中小企業も同じです。すべてのお客様に同じ価格を提示しなければならない決まりはありません。
長年支えてくださっている方、紹介してくださる方、まとめて発注くださる方。
優先したい相手に、優先した条件を出す。これは値引きではなく、設計です。

まず、この三つを確かめてみてください

自社の主力商品について、次の三つに即答できるかどうか、試してみていただきたいと思います。

  1. この商品を、いちばん喜んでくださっているお客様は誰でしょうか。
  2. その方は、この商品の「何に」お金を払っておられるのでしょうか。
  3. その値段は、どうやって決めたものでしょうか。

三つ目に、はっきり答えられる社長は、実はそう多くありません。
多くの場合、「昔からこの値段で」「なんとなく相場で」という答えになります。
それは能力の問題ではなく、値決めを体系的に考える機会がなかった、というだけのことです。

値決めは、社長にしかできない仕事です

価格を1割上げられれば、その分はほぼそのまま利益として残ります。
同じ1割を、売上を伸ばして稼ごうとすれば、人も時間も広告費もかかります。
値決めは、社長が今日決断すれば今日から効く、数少ない打ち手です。

とはいえ、いきなり値段だけを動かすのは危険です。商品の中身、届ける相手、伝え方。
この三つが揃ってはじめて、価格は動かせます。逆に言えば、そこを整理できれば、
値上げは怖いものではなくなります。

私の経営相談では、決算書の数字と事業の中身を突き合わせながら、
「どの商品を、誰に、いくらで売るのか」を一緒に整理していきます。
頭の中にあるモヤモヤも、言葉にして話すだけで、驚くほどすっきりするものです。
値決めに迷いがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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