雨が降れば傘をさす─「当たり前」を当たり前にやる経営
「成功の秘訣は何ですか?」
これは、松下幸之助さんが生涯でいちばん多く受けた質問だそうです。
そのたびに、幸之助さんはこう聞き返したといいます。
「あなたは、雨が降ったらどうしますか?」
「……傘をさします」
「そうでしょう。それですよ」と。
拍子抜けするような答えですよね。でも、ここにこそ本質がある。
雨が降れば傘をさす。暑ければ薄着になる。100円で仕入れたものは、110円で売る。
当たり前のことを、当たり前にやる。ただ、それだけ。
ところが、これが「商売」になったとたん、できなくなる人が本当に多いのです。
貸したお金を「返して」と言えない
幸之助さんが、こんな話を残しています。
ある経営者が、資金繰りに困って幸之助さんのところへお金を借りに来ました。
ところがこの人、もともとは人にお金を融通してあげている側の人だったのです。
だから幸之助さんは言いました。
「君はいろんな人に貸しているだろう。その人たちに率直に話して、少し返してもらえばいいじゃないか」と。
すると、その経営者はこう答えます。
「いや、それは恥ずかしくて、かっこ悪くて言えません」
貸したお金を「返してもらえないか」と頼む。
どこにも間違っていない、当たり前のことです。なのに、プライドが邪魔をして言えない。
結局その人は、勇気を出して率直に話してみました。
すると、まわりが前倒しで返してくれて、幸之助さんから借りるまでもなく、事なきを得たそうです。
最初から、当たり前をやればよかっただけ、なのですよね。
これ、私たち経営者も同じでしょう?
仕入れ値が上がった。だったら、価格を上げる。当たり前のことです。
でも、「周りはまだ上げていない」「上げたら売れなくなるかもしれない」。
そうやって、なかなか上げられない。気づけば、上がったコストを自分の身を削って飲み込んでいる。
賃上げも、同じです。社員に報いたい気持ちはある。当たり前にやるべきだと、頭ではわかっている。
それでも、目の前の数字や世間の空気を気にして、つい先送りにしてしまう。
当たり前を、当たり前にやる。実は、これがいちばん難しいの。
わかっているのに、感情やプライドやしがらみが、そのじゃまをする。
傘を、ちゃんとさせているか
雨が降っているのに、傘をささない。そんな経営が、意外と多いのです。
大きな成功も、はじめの一歩は、こういう些細な「当たり前」の積み重ねなのだと思います。
昨日より少しだけ、当たり前を当たり前にやれたら、明日の一歩は確実に変わっていく。
あなたの商売で、「当たり前なのに、まだやれていないこと」は何でしょう?
その一つに手をつけることが、次の景色への入口になる。
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