「マネ」から始めていい。強いビジネスモデルのつくり方

2026/07/24 経営

「イノベーションはゼロから」という思い込み

新しいビジネスやヒット商品と聞くと、多くの人は「何もないところから、
天才がゼロから生み出したもの」を思い浮かべます。

私自身も、長らくそう信じていました。

ですが、ある対談動画で早稲田大学商学部・井上達彦教授の言葉を聞いて、
その考えが根本から覆されました。

井上教授は、ビジネスモデル研究を30年続けてきた、この分野の第一人者です。

「多くの場合、イノベーションは模倣から生まれている。ゼロじゃないんです」

最初は違和感がありました。

模倣、つまり「マネ」から生まれるものが、本当にイノベーションと呼べるのか。

けれど、具体的な事例を知るほどに、深く納得させられていきました。

一流企業は、みんな”マネ”から生まれた

誰もが知る企業ほど、実は他所からの「学び」を出発点にしています。

スターバックスは、イタリアのエスプレッソバーで体験した”サードプレイス
(家庭でも職場でもない第三の居場所)”という価値を、そのままアメリカに持ち込みました。

ドトールコーヒーの創業者・鳥羽氏は、パリの街角の立ち飲みコーヒーを見て「これだ」と直感し、
日本に持ち帰りました。

マクドナルドにいたっては、ハンバーガー店ホワイトキャッスルの仕組みに、
フォード自動車のベルトコンベア方式を掛け合わせることで、あの効率的な仕組みを完成させています。

共通しているのは、いずれも”自分の業界の中”ではなく、”外”からヒントを得ているという点です。

同業他社を見て真似ても、結局は似たようなものしか生まれません。

だからこそ、異業種・海外・過去という「遠いところ」に目を向け、
必要な要素だけをピンポイントで拝借する。ここに、独自性が生まれる余地があるのです。

そもそも「強いビジネスモデル」とは何か

井上教授によれば、ビジネスモデルとは一言でいえば「儲けの仕組み」です。
ただし、多くの人は「どうやって売上を上げるか」というお金の集め方だけに目を向けがちです。

それだけでは不十分だといいます。

たとえばスターバックスの強さは、「コーヒー1杯いくら」という売り方にはありません。
サードプレイスという”価値”を提供し、それを守るために出店場所を厳選し、あえて直営にこだわる。

この一連の”仕組み”全体が強さの源泉です。ゆっくり過ごしてほしいから回転率では稼がない。
その代わり単価と立地で価値を成立させる。すべてが噛み合っています。

強いか弱いかは、身近な例でも見分けられます。
中古品を「仕入れて在庫を抱えて売る店舗」と、メルカリのように「売り手と買い手をつなぐだけの仕組み」。

どちらが強いかといえば、在庫リスクも店舗も従業員も抱えない後者です。
どんな状況でも赤字になりにくい”型”かどうか。そこを見るのがポイントだといいます。

「模倣」を「守破離」と捉え直す

「模倣」という言葉に抵抗があるなら、日本古来の「守破離」に置き換えるとしっくりきます。

まず、優れたお手本を徹底的に”守る”。とことん真似て、習熟する。
やがて、自分の感覚とお手本との違いに気づき、自然と”破り”たくなる。
そして最後は、より高い次元で自分なりの形へと”離れて”いく。

浮世絵師の葛飾北斎も、最初の師匠に学びながら、あえて別の師匠からも吸収し、
いくつもの要素を取り入れて独自の画風を確立しました。

才能一発ではなく、”いいとこ取り”の積み重ねだったのです。
ビジネスの世界も同じで、何かを破らなければ、本当のイノベーションには至りません。

遠いお手本を見つける、3つのステップ

では、どうやって”遠いお手本”を見つければいいのか。

手順はシンプルです。

第一に、自社の現状を把握し、課題を整理すること。
お手本を探す前に、まず自分の強みと弱みを正確に知る。ここが出発点です。

第二に、同じ課題で悩んでいた”別の業界”を探すこと。
同業ではなく、あえて異業種に視線を向けます。

第三に、その業界の中で、その課題をうまく解決した会社を見つけること。
それが、あなたのお手本になります。

やるべきことは、「課題」と「お手本」のマッチング。

かつては足で情報を稼ぐしかありませんでしたが、今ならAIを使って情報を集め、
この2つを結びつけるだけで、驚くほど多くのヒントが得られます。

まずは、書き出すことから

あなたが今ぶつかっている課題は、まったく違う業界の誰かが、
とっくに解決しているかもしれません。答えは、案外いつも一歩外にあります。

大切なのは、いきなり答えを探しにいくことではなく、
まず自社の課題を書き出してみること。

そこから、あなたのビジネスを一段強くするお手本探しが始まります。