AIで「差」がつく時代に、経営者に最後まで残るもの ― 高知の社外CFOが考える、スキルよりセンス

先日、「AI時代の企業変革」をテーマにした対談動画を観ていて、思わず「え!?」と声が出ました。
一橋ビジネススクールの楠木建先生の、この一言です。
「今起きているのは、急速なスキルのデフレと、センスのインフレ」
税理士・社外CFOとして高知の経営者に伴走している私にとって、これはとても腑に落ちる表現でした。
今日は、この言葉を入り口に、AI時代に経営者へ最後まで残る仕事について書いてみます。
AIで頑張るほど、みんな「同じ」になる
AIに戦略を作らせると、驚くほど立派なものが出てきます。
企画も、リサーチも、一瞬です。
ところが、ここに落とし穴があります。
他の会社が同じAIを使えば、同じような答えが出てくる。
対談の中で博報堂の森正也さんが「同じになっちゃうんですよ」とおっしゃっていましたが、
まさにその通りで、AIで頑張れば頑張るほど、各社の戦略は金太郎飴のように似通っていきます。
競争における「違い」には二種類あります。
「うちの方が速い・安い・上手い」という“より良い”違いと、
「うちは、そもそも違います」という、違うポジションを取る違い。
AIが加速してくれるのは前者です。
しかし本当に効いてくるのは後者で、この“どこに違うポジションを取るか”という選択は、
最後まで人間に残ります。
スキルはデフレ、センスはインフレ
教科書どおりに身につく定型的なスキルの価値は、これからどんどん下がっていきます。
一方で、「どの選択肢を選ぶか」「何と何を組み合わせるか」というセンスの価値は上がっていく。
しかも救いなのは、センスは生まれつきのものではなく、自分の仕事と経験の中で後から磨けるものだ、
ということです。
では、どう磨くのか。
対談で示された答えが「対話」でした。
AIが得意な要約は、言い換えれば“脱文脈化”です。
どこでも通用するキレイな部分だけを残し、その人だけの事情、
その現場だけの思いは、こぼれ落ちてしまう。
だからこそ、「要約から漏れたものを、後でちゃんと聞く」ことが大事になる。
これはもう、AIの話ではなく、経営者の“在り方”の話です。
財務の現場でも、同じことが起きている
「AIを導入した企業の多くが、実は利益に結びついていない」という調査が話題になりました。
理由のひとつは、AIに詳しい専門チームだけで導入を進め、
現場をよく知る“熟練者”が関わっていないことにあります。
うまくいっている会社は逆で、会社のこと・業務のこと・お客さんのことを深く知っている人が、
自分の知識とAIを掛け合わせて新しいステージに進んでいます。
決算書には出てこない強み。
ベテランの手の感覚、社長の判断基準、地域での信頼、人脈。
こうした「暗黙知」に、AIの一般的な答えを掛け合わせたとき、
初めて隣の会社には真似できないものになります。
AIかける、人。AIかける、その会社ならではの知恵。ここでようやく差がつくのです。
リーダーに求められるものは、実はあまり変わらない
結局のところ、人間力、決断、ビジョン、そして対話。
AIが登場するずっと前から言われてきたことです。
特に決断について心に残ったのは、本当の意思決定は「良いことと悪いこと」の選択ではなく、
「良いことと、良いこと」のどちらを取るか、片方を捨てる決断だ、という話でした。
AIはいくらでも選択肢を並べてくれますが、「で、どれが一番いいの?」とAIに聞きたくなった時点で、
経営者の仕事を手放しています。選ぶのは、最後は人です。
そしてビジョン。サンテグジュペリの、こんな言葉が引用されていました。
「船を作りたいなら、人々に木を集めさせるな。まず、広大な海への憧れを目覚めさせよ」。
タスクを指示するのではなく、憧れを灯す。
AIで劇的に変わる時代だからこそ、「我々はどこへ行くのか」を語れるリーダーが強い。
便利さに、自分を見失わないために
正直に言えば、私自身も「AIを使いこなしている」つもりで、
実は“みんなと同じ”のラクな方に流されかけていました。
便利さに飲まれると、いちばん大事な軸を手放してしまう。
だからこそ、順番を間違えないことです。「AIに何ができるか」から入らない。
まず「自社は何で稼ぐのか、何を大事にしたいのか」という軸があって、
そのために資金繰りを可視化し、投資として判断する。
AIはあくまで道具で、心強い右腕にもなれば、コストだけを生む重荷にもなります。
「うちの場合はどう考えればいいのか」と迷われたら、ぜひ一度ご相談ください。
数字と一緒に、その軸を整理するお手伝いをします。
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