過剰在庫の本当の原因は「現場のミス」ではない ─ 製販連携と在庫の鮮度管理
ある製造業の現場で起きていたこと
先日、ある製造業のお客様から、
「気づけば在庫が昨年より大きく膨らんでいる」というご相談をいただきました。
最初に疑われたのは、いつもの“犯人”
発注担当者の判断ミスや、現場の在庫の持ちすぎです。
しかし一緒に原因を掘り下げると、問題はもっと上流にありました。
本コラムでは、過剰在庫が生まれる本当のメカニズムと、
それを断つための2つの打ち手―製販連携した生産計画(入口)と 在庫の鮮度管理(出口)を、
実務目線で整理します。
過剰在庫の真因は「見通しと実需のズレ」が共有されないこと
このお客様で起きていたことは、突き詰めると次の流れでした。
- 営業の見通しと、実際の需要にズレが生じていた(「売れるはず」と見込んだ量ほどは売れなかった)
- そのズレが工場へ十分に共有されなかった
- 結果、見通しのままモノを作り続け、過剰生産=過剰在庫につながった
つまり、犯人は「個人の発注判断」ではなく、営業と製造の“連携不足”という構造でした。
需要の変化が生産計画に反映される仕組みがなければ、現場がどれだけ頑張っても在庫は膨らみます。
ポイント
過剰在庫は「結果」です。
原因は、需要情報が作る側に届いていないこと。
ここを直さずに在庫だけを追いかけても、また膨らみます。
落とし穴:在庫を「数量」だけで見ている
もう一つ、多くの会社に共通する弱点があります。
在庫管理表が「商品名・在庫数・販売数」といった数量ベースになっていることです。
経営が本当に気にするのは「在庫“金額”」です。
数量だけの表では、《いくら資金が眠っているか》《施策でいくら圧縮できたか》を経営に示せません。
測りたいもの(金額)と、測れているもの(数量)がズレているのです。
解決の2本柱:「入口」と「出口」の両方を締める
過剰在庫は、蛇口を1つ締めるだけでは止まりません。
作りすぎ(入口)と 眠らせすぎ(出口)の両方に手を入れます。
入口対策:製販連携した生産計画
ねらいは「売れる前提で作る」から「需要に合わせて作る」への転換です。
具体的には、
- 営業の見通しと実需のズレを早期に把握する(週次・月次で実績と見込みを突き合わせる)
- そのズレを工場とリアルタイムに共有し、生産計画へ反映する
- 営業・製造・在庫の担当者が同じ数字(同じ需要見通し)を見て意思決定する
大掛かりなシステムは必須ではありません。
まずは「営業と工場が同じ数字を見る場」を、定例の打ち合わせとして持つだけでも効果が出ます。
出口対策:在庫の鮮度管理
すでに抱えている在庫は、「鮮度」
つまりいつ入った在庫で、何日眠っているかで管理します。
在庫は次の2つの軸で見ると、状態を正しく切り分けられます。
| 軸 | 指標 | 何が分かるか | 対象 |
| 量の軸 | 供給日数(在庫数 ÷ 日販) | あと何日分あるか | 過剰/欠品 |
| 時間の軸 | 滞留日数(棚卸日 − 入庫日) | 何日眠っているか | 滞留/不動 |
「よく動くが多すぎる(過剰)」在庫と、
「ほとんど動かず眠る(滞留)」在庫では、打つ手がまったく違います。
前者は発注・生産の抑制、後者は販促・用途転換・処分です。
この出口管理を機能させるために、管理表へ次の視点を入れます。
- 金額で見る
(在庫単価・在庫金額) いくら削減できたかを語れる - 鮮度を見る
(入庫日・滞留日数、必要なら期限残日数) 眠っている在庫を可視化 - 判定をルール化する
(例:供給日数60日超=過剰/15日未満=欠品リスク/滞留90日超=処分検討)
勘に頼らず、色分けで一目に - 重点管理する(ABC分析)
在庫金額の上位2割に集中する - 推移で進捗を見せる(在庫金額の月次推移)
削減の進捗を経営へ
おわりに:入口と出口、両方そろって初めて止まる
過剰在庫の本質は、需要情報が生産に届いていないこと(入口)と、
眠っている在庫が見えていないこと(出口)の2つです。
逆に言えば、製販連携で“作りすぎ”を抑え、鮮度管理で“眠らせすぎ”を早期に断つ。
この両輪を回せば、特別なシステムがなくても、欠品防止と在庫圧縮は両立できます。
自社の生産計画や在庫管理表を見直したいという方は、お気軽にご相談ください。
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