赤字脱却の鍵は「数字の把握」と「還元」にあり。ある地方病院に学ぶ、組織再生の3つのフェーズ
7割の病院が赤字に陥る時代、生き残るための条件とは?
現在、20床以上を持つ病院の約7割が赤字に陥り、倒産件数も急増しています。
その背景には、物価高騰や高度医療機器への投資、人件費の上昇といったコスト増がある一方で、
国が定める診療報酬(単価)は据え置かれているという、極めて厳しい構造的な問題があります。
「国の方針が悪い」「立地が悪い」と嘆くのは簡単ですが、外部環境を変えることはできません。
しかし、患者数減少や多額の借入金に苦しむ状況から、わずか3年間で利益率を大幅に向上させた病院の事例を紐解くと、そこにはどんな医療機関でも応用できる「組織再生の3つのフェーズ」
が存在することがわかります。
フェーズ1:まずは「自分ひとりでできるコスト削減」から始める
経営が苦しい時、いきなり現場のスタッフに「コストを意識しろ」「もっと働け」と要求しても、
反発を生むだけです。 改革の第一歩は、過去の財務諸表を徹底的に洗い出し、
「数字」という客観的な事実と向き合うことから始まります。
例えば、適正な価格での仕入れ交渉やデッドストックの削減など、
「現場のスタッフに直接影響を与えない(負担をかけない)部分のコスト削減」から着手し、
まずは小さな利益(手元資金)を捻出することが重要です。
フェーズ2:「給料アップ」の明確な約束と、惜しみない先行投資
生み出した小さな利益を内部に溜め込んではいけません。
次に行うべきは、それを原資とした「職員への還元」と「未来への投資」です。
組織を動かすためには、「病院のために経営を良くしよう」といった抽象的なスローガンではなく、
「皆の給料を20%アップさせる。そのために業務を10%効率化し、売上を10%上げよう」という、
職員にとって直接的なメリット(自分事)となる目標を掲げることが有効です。
同時に、採用活動(ブランディング)や職員教育に惜しみなく投資を行うことで、
高額な紹介業者への依存から脱却し、
自立的な採用ルートと高いモチベーションを持つ組織を構築することができます。
フェーズ3:「形骸化したルール」の打破と、働きやすさの追求
利益が安定し始め、実際に給与や賞与のアップ(約束の実行)ができるようになると、
職員との間に強固な信頼関係が生まれます。
この段階で、組織の風通しを悪くしている「形骸化したルール」にメスを入れます。
例えば、長年不満の温床になっていた「互助会(高い月額会費や無償での役員奉仕)」
の仕組みを病院負担の慶弔金制度へと改革したり、無駄な会議を削減したりすることで、
現場のストレスを取り除きます。
IT化の推進と合わせて医療職が「本来の業務」に専念できる環境を整えることが、
結果として生産性の劇的な向上に繋がるのです。
まとめ:数字を武器に変え、職員の未来を描く
この事例が教えてくれる最大の教訓は、
「経営改善とは、単に利益を追求することではなく、
患者と職員の双方にとって『良い病院』を作るための手段である」ということです。
「人が採れない」「利益が出ない」と悩む前に、
まずはどんぶり勘定から脱却して自院の数字を把握すること。
そして、その数字を武器にして生み出した利益を、
職員の待遇や働きやすさへ確実に還元していくこと。
この「構造改革のサイクル」を回し始めることが、
過酷な時代を生き抜くための最も強力な戦略と言えるでしょう。
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