自己資金はいくら必要?― 「ゼロでも借りられる」の本当のところ ―
「手元にお金がないけれど、借りられますか」。
創業融資の相談で、最も多い質問のひとつです。
先日、当事務所で開催した日本政策金融公庫との勉強会でも、
この自己資金の話には特に時間を割きました。担当者の言葉とともに、結論からお伝えします。
結論:ゼロでも申込めるが、現実は「約2割」が目安
まず結論です。現在は、自己資金がゼロでも申込み自体は可能です。
ただし、実際に融資を受けている方のデータを見ると、
調達総額に対して平均で約2割の自己資金を入れているケースが多い、とのことでした。
平均的な自己資金は、調達総額のだいたい2割くらい。
たとえば1,000万円の調達なら、200万円くらいですね。
「ゼロでもいける」と「2割が目安」。一見矛盾するこの2つを、順を追って解説します。
かつての「3分の1ルール」は、いまはない
以前の創業融資には、「3分の1の自己資金を用意しないと申し込めない」という要件がありました。
長い歴史の中でこの要件は見直され、現在は撤廃されています。
自己資金が十分に用意できなくても、まずは申込みのテーブルに着けるようになった、ということです。
とはいえ、これは「自己資金は関係ない」という意味ではありません。
むしろ、金額そのもの以上に大事になってきたのが、次の「見せ方」です。
金額より大事な「自己資金の見せ方」
担当者が繰り返し強調していたのが、自己資金は「どう貯めてきたか」「中身が分かるか」が問われる、
という点でした。
勤務されていた頃に、日々の生活の中でコツコツ蓄積された。
そういう中身の分かる形で提示していただくのが基本です。
勤務時代に通帳でコツコツ積み立ててきた資金や、計画的に積んだ定期預金を解約したもの。
こうした「通帳の動きで裏付けられる資金」は高く評価されます。
資本金として入れても、個人の資産として持っていても構いませんが、
いずれにせよ出どころが説明できることが大切です。
やってはいけない「見せ金」
逆に、評価されないどころか逆効果になるのが、いわゆる「見せ金」です。
どこかから借りてきて、申込みの直前にズドンと口座に入っている――そういうケースは、こちらで裏付けを調査するので分かってしまうんです。
一時的に借りて口座に入れた資金は、調査の過程で見抜かれます。そしてそれが借入だと分かれば、自己資金とは扱われません。結局は全額借入と同じことになり、その分だけ毎月の返済負担が増えてしまう。つまり、無理に見せかけても、自分の首を絞めることになるのです。
なぜ自己資金が大事なのか ―― 2つの理由
① 返済負担を抑えられる
全額を借入でまかなうと、当然ながら返済の総額も毎月の負担も大きくなります。
事業の立ち上がりは、思ったより時間がかかるもの。
軌道に乗る前から重い返済が始まると、資金繰りが一気に苦しくなります。
自己資金を入れて借入を抑えることは、その後の経営を守ることに直結します。
② 「計画性」を示す材料になる
公庫は審査で「計画性」を見ています。
担当者は、自己資金をどれだけ準備できたかも、その計画性を測る一つの要素だと話していました。
コツコツ準備してきた事実そのものが、「この人は計画的に物事を進められる」という信頼につながるわけです。
だからこそ、「2割揃えないと申し込めない」わけではないけれど、計画性を示し、
返済負担を抑える意味でも、無理のない範囲で自己資金を入れておくのが有効、
というのが担当者の見解でした。
一つの目安として、たとえば500万円ほどを借りる場合、
2割程度は手元にあるほうが進めやすい(事業内容にもよる)とのことです。
ただし、自己資金「だけ」で決まるわけではない
最後に大切な補足です。担当者は、自己資金だけで融資の可否を判断しているわけではない、
とも強調していました。
自己資金はもちろん重要なんですけど、やっぱりその業界での経験や修行経験、
過去にどういうことをやってきたかというプロフィールも見ます。
その事業に関する経験や実績、業界に精通しているか。
もし経験が不足しているなら、それをどう補うのかを計画書で示せるか。
自己資金が十分でなくても、こうした強みでカバーできる余地はあります。
逆に、自己資金が潤沢でも、計画や経験の裏付けが弱ければ評価は伸びません。
まとめ ― 「いくら貯めるか」と「どう示すか」
自己資金はゼロでも申込めますが、現実には調達総額の約2割が一つの目安。
そして金額以上に、「コツコツ貯めてきた、裏付けのある資金か」という見せ方が問われます。
見せ金は逆効果。無理のない範囲で準備し、経験やプロフィールと合わせて総合的に示すことが、
通る計画への近道です。
当事務所では、自己資金の準備の考え方から、その示し方、創業計画書への落とし込みまで伴走します。
「自分の場合、いくら用意すればいいのか」を具体的に知りたい方は、計画段階からお気軽にご相談ください。
※本記事は、当事務所で開催した日本政策金融公庫との勉強会の内容と、公庫の配布資料(令和8年度版)をもとに作成しています。要件・取扱いは事業内容や審査により異なり、希望に沿えない場合もあります。最新の情報は公庫の窓口等でご確認ください。
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