「結局、いくら借りられるの?」― 融資額はどう決まるのか、日本政策金融公庫の見解 ―
融資の相談で、経営者の方が最も知りたいこと。
それは制度の細かな違いよりも、結局のところ「自分の事業で、いくら借りられるのか」ではないでしょうか。
先日、当事務所で開催した日本政策金融公庫との勉強会でも、この点を率直にぶつけてみました。
返ってきた答えを、担当者の言葉とともに整理します。
公庫の答えは「一概には言えない」。その理由
満額が出るケースはどのくらいか。
この問いに対する担当者の答えは、意外にも明快な数字ではありませんでした。
企業はやっぱり生き物のようなもので、同じ飲食業でも一社ごとに全然違ってくる。
だから一概には言えないんです。
「業種ごとに上限額が決まっている」わけでも、
「売上の何倍まで」という単純な計算式があるわけでもありません。
融資額は、その事業の中身を一社ずつ見て決まる。
これが出発点です。
逆に言えば、見られるポイントを押さえれば、自社にとっての現実的な金額が見えてきます。
融資額を左右する4つの要素
① 事業性 ― その事業で、きちんと返せるか
最も大きいのが「事業性」です。
その事業がどれだけ売上・利益を生み、そこから無理なく返済できるか。
融資額は、希望額そのものではなく、事業が生み出す返済力に見合っているかで判断されます。
② 返済負担とのバランス ―― 規模に対して高すぎないか
担当者が「減額されやすいパターン」として挙げたのが、事業規模に対して高額すぎる申込みです。
事業規模に応じて、高額のお申し込みで『この返済負担はちょっと危ないよね』となると、
公庫の方で調整させていただくことになります。
月々の返済が事業を圧迫してしまえば、結局は経営が苦しくなります。
借り手を守る意味でも、返済負担が重すぎる場合は金額が抑えられる、ということです。
③ 自己資金 ―― 目安は調達総額の約2割
自己資金ゼロでも申込み自体は可能ですが、データ上、
調達総額に対して平均で約2割の自己資金を入れている方が多いとのこと。
たとえば1,000万円を調達するなら、200万円程度が一つの目安です。
自己資金は金額そのものだけでなく、計画性を示す材料としても見られます。
④ 他の金融機関とのバランス(既存事業者の場合)
すでに事業をしている方の場合は、取引のある金融機関とのバランスも考慮されます。
公庫が一社で大きく出すと、その分だけ返済が膨らんでしまう。
だからこそ、メインバンクをどこに置くのか、今後の資金調達をどう考えているのか、
といった将来像も含めて相談しながら金額を決めていきます。
創業時はまだメインバンクが決まっていない方も多いもの。
その場合も「今後どう付き合っていくか」を一緒に考えていく、という姿勢でした。
公庫の考え方 ― 「知恵・借り・運」で大きく育てる
金額について、担当者が繰り返し口にしたのが、公庫に古くからある考え方です。
知恵・借り・運で大きく育てる。なるべく設備資金は圧縮して、運転資金はしっかり用意する。
最初は小さく融資をして、そこで実績をつけて、徐々に取引を広げていく。
いきなり大きな金額を借りるのではなく、まず小さく借りて返済実績を作り、
信頼を積み上げながら次につなげる。これが公庫の基本スタンスです。
そのため、設備資金はできるだけ圧縮する工夫を一緒に考えます。
飲食店なら居抜き物件を使う、中古の厨房機器(冷蔵庫など)を活用する、といった具合です。
担当者いわく、これは「減額」というより、お客様と話しながら投資額を最適化していくイメージだといいます。
「いくら借りるか」より「いくら必要か」
では、適正な金額はどう考えればよいのでしょうか。
一つの目安として示されたのが、運転資金の考え方です。
事業が黒字化するまでには、平均しておよそ6か月かかるというデータがあります。
そこで、その期間を乗り切れるだけの運転資金を準備しておく。
たとえば固定費が月50万円なら、半年分で300万円程度を見込んでおく、という発想です。
立ち上がりはいきなり売上が立つわけではなく、じわじわ伸びていくもの。
だからこそ、手元資金に余裕を持たせることが大切です。
元金の返済を待ってもらえる「据置期間」を活用すれば、軌道に乗るまでの負担をさらに抑えられます。
平均額に振り回されない
「みんなはいくら借りているのか」も気になるところです。
借入額の平均はおおよそ800〜900万円という数字もありますが、担当者は「実際はピンキリ」と言います。
居抜き物件で300万円から開業する方もいれば、希望額を上乗せする方もいる。
平均はあくまで参考値で、自社にとっての適正額とは別物です。
なお、創業で5,000万円を超えるような高額の申込みは、
原則として他の金融機関との協調融資が検討されます。
これはドクターの開業など特定のケースに限られ、一般的な創業ではまれです。
リスク分散の観点から、複数の金融機関で分けて調達するという選択肢もあります。
まとめ ― まずは事前相談で「自社の金額」を
「いくら借りられるか」に万能の答えはありません。
事業性・返済負担・自己資金・他行とのバランスを一社ずつ見て決まるからこそ、
大切なのは「いくらが自社にとって適正か」を一緒に設計することです。
公庫は事前相談を受け付けており、申込前に内容を整理しておくほど、その後の手続きもスムーズになります。
当事務所では、必要な資金の見積りから、設備の圧縮・運転資金の確保といった金額の最適化、創業計画書の作成、
面談の準備まで伴走します。
「うちの事業だと、いくらが現実的か」を知りたい方は、ぜひ計画段階からご相談ください。
※本記事は、当事務所で開催した日本政策金融公庫との勉強会の内容と、公庫の配布資料(令和8年度版)をもとに作成しています。融資額や条件は事業内容・審査により異なり、希望に沿えない場合もあります。最新の取扱いは公庫の窓口等でご確認ください。
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