心臓の手術をした月に、独立しました ― 社長が1か月動けなくなったら、会社は回りますか

2026/10/30 経営
社外CFO 馬醫光明

2024年12月、追突事故にあいました。

しばらく、まともに動けませんでした。それまで当たり前にできていたことが、できない。治療が長引いて、先も見えませんでした。

手術が決まるまでは、意外と平気でした。やることが決まっていたからだと思います。

怖くなったのは、直前です。心臓の手術でした。うまくいかないこともあるよな、と頭をよぎりました。

手術をした月に、独立しました

手術は、2025年5月でした。

そして同じ月に、自宅の一室で独立しました。スタッフはゼロです。

いま思えば、無茶です。体を治してからでも、よかった。それでも、あのとき決めてしまいました。ここで一から立て直す、と。

数字を見る側から、現場に入って

それまでの私は、ずっと会社の数字を見る側でした。海外で工場を立ち上げて、最後はその会社をたたむところまで見届けています。

高知に移ってから、中小企業の現場に入るようになりました。そこで、見方が変わりました。

判断の基準が、どこにも書かれていない

多くの会社で、同じことが起きていました。

  • 数字が手元に届くのは、ずいぶん経ってから
  • 何をどこまでやったら決めていいのか、決まっていない
  • 計画はあっても、開かれない

判断の基準が、社長の頭の中にあります。

その会社が悪い、という話ではない

誤解のないように書いておきます。これは、その会社が悪いという話ではありません。

社長が全部わかっているから、書く必要がなかっただけです。必要がなかったものは、つくられません。自然なことです。

ただ、困る場面が1つだけあります。

社長が1か月入院したら

私は、動けなくなったばかりでした。だから、現場に入るたびに、どうしてもこう考えてしまいます。

この社長が1か月入院したら、この会社はどうなるんだろう。

数字は誰が見るのか。決裁は誰がするのか。取引先への返事は、誰が出すのか。

怖いのは、業績が落ちることではない

1か月売上が落ちることは、取り返せます。

怖いのは、社長が倒れた日に、誰も代われないことです。判断の材料が外に出ていないので、代わろうにも代われません。

だから私がやっているのは、社長の頭の中にあるものを外に出して、誰でも見える形にすることです。

  • 事業ごとに、数字を分ける
  • どこまで売れば黒字になるのか、線を引く
  • 何をどこまでやったら決めていいのか、決めておく

派手な仕事ではありません。けれど、ここが抜けている会社は、社長が止まると全部が止まります。

もうひとつの「一人で抱える」問題

先日、ある社長が、相談の途中でふっと涙を流されました。

お父様から事業を継いで、30年。借入も完済された方です。はたから見れば、安泰そのものに見えます。

その方が、こうおっしゃいました。

「事業の台所事情は、なかなか誰にも話せない」

そのあとに出てきたのが、この言葉でした。

「話していい人がいた」「話して、よかった」

数字の話をしていたわけではありません。ずっと張りつめていたものが、ゆるんだのだと思います。

社長が倒れたときに代われる人をつくることと、その前に一人で抱え込まない状態をつくること。どちらも、同じところにつながっています。

おわりに

自宅の一室から、1年半が経ちました。派手な話は、何もありません。

それでも、決算書を持って相談に来てくださる社長が、少しずつ増えました。

貴社は、社長が1か月動けなくなったときに回るでしょうか。そしていま、その不安を飾らずに話せる相手は、どこかにいるでしょうか。

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