「山の葉っぱ」が、年商2億円になる時代に

2026/07/30 経営

物価高、賃上げ、採用難、定着難。いわゆる”4重苦”に、多くの経営者が頭を悩ませています。
コストは上がる、人は採れない、採れても続かない。
真正面から受け止めると、ため息しか出てこない。そんな時代です。

けれど先日、ある勉強会で聞いた一言が、ずっと頭に残っています。

「社会課題を、自社の課題にする」

人口が減り、地域が衰退していけば、そこで商売をする自分の会社も、いずれ一緒に沈んでいく。
だからこそ、地域の”困りごと”を、自社の事業にできないか。
一見きれいごとのようで、実はこれ、これからの生き残り戦略そのものではないか、と感じたのです。

徳島・上勝町、おばあちゃんたちの「葉っぱビジネス」

思い出したのが、徳島県上勝町の話です。人口1,500人ほどの、小さな山あいの町。
ここで生まれたのが、料理に添える”つまもの”
紅葉や南天、笹の葉といった葉っぱを出荷する「いろどり」という事業です。

きっかけは、1981年の異常寒波でこの町の主要作物だったミカンが壊滅したこと。
そこから、山にいくらでもある葉っぱに目をつけ、1987年に出荷が始まりました。

驚くのは、その担い手です。中心となっているのは、70歳以上の女性たち。

重い荷物も運べない、農薬もまけない。
そんな高齢の女性が、軽くて扱いやすい葉っぱなら、いきいきと働ける。

町全体では、最も多い年で年商2億6,000万円。中には、年収1,000万円を稼ぐおばあちゃんもいたといいます。
「忙しゅうて、病気になっとれんわ」と笑う。
そんな元気なお年寄りが、この町にはたくさんいるそうです。

過疎も、高齢化も、本来は”問題”だったはずです。
それを、「うちの町にしかできない仕事」に変えてしまった。ここに、大きなヒントがあると思うのです。

「買い物難民」を、事業に変えた移動スーパー

もう一つ、同じ徳島発の事例があります。移動スーパー「とくし丸」です。

代表の方が、自分の母親が”買い物難民”になっていることに気づいたのが始まりでした。
近くの店が消え、「買える時に買っておかないと、次はいつ買えるか分からない」と、
驚くほど買い込む高齢者の姿。そこに、困りごとと同時に、商いの芽を見たのです。

軽トラックに約400品目・1,000点の商品を積み、お年寄りの自宅の前まで届ける。
ただ売るだけでなく、顔を見て言葉を交わす”見守り”も兼ねる。

全国に約700万人いるとされる買い物難民という社会課題が、そのまま事業として成立しています。
2012年に徳島で始まったこの仕組みは、今では全国へ広がりました。

社会課題は、”コスト”ではなく”種”である

この2つの事例に共通するのは、視点の置き方です。
過疎、高齢化、買い物難民。
これらを「対処すべきコスト」として見るのか、それとも「まだ誰も拾っていない仕事の種」として見るのか。
同じ現実を前にしても、立つ位置がまるで違います。

そして、困りごとの数だけ、ビジネスの種はあります。
物価高も、人手不足も、裏を返せば「誰かが、確かに困っている」ということ。
困っている人がいる場所には、必ずその困りごとを解いてほしいという需要が眠っています。

大切なのは、遠くの誰かの課題ではなく、あなたのすぐそばにある困りごとに目を向けること。
自社の商品やサービス、あるいはこれまで培ってきた強みで、「地域の誰の、どんな困りごとを解けるか」。
その問いから逆算したとき、値下げ競争とはまったく別の、
あなたにしかできない商いの輪郭が見えてくるはずです。

あなたの会社が解決できる”誰かの困りごと”は、何でしょうか。
その困りごとの隣に、次の商売が眠っているかもしれません。

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