「すでに起こった未来」を、あなたは見えていますか― 抹茶高騰が、経営者に教えてくれること

2026/07/09 経営

先日、新聞をめくっていたら、大きな見出しが目に飛び込んできました。

「県内茶葉高騰 抹茶人気余波」

え、抹茶って、そんなに不足しているのか。
思わず記事に見入ってしまいました。

いま、世界中が抹茶に夢中です。
SNSとカフェブームに乗って、日本の抹茶は海外へ飛ぶように出ていきます。
昨年の緑茶輸出額は、およそ400億円。過去最高の水準です。

ところが、作るほうが追いつきません。
京都の入札では、抹茶の原料価格が前年の2.7倍。
40グラムで1,500円ほどだったものが、6,500円へ。4倍を超える値がついています。

記事には「例年の3倍の価格で取引」という言葉まで載っていました。

ブームは読めない。けれど「結果」は読める

ここで私は、ある言葉を思い出しました。
経営学者ピーター・ドラッカーの「すでに起こった未来」です。

ドラッカーはこう言います。未来そのものは予測できない。
けれど、”すでに起こってしまった変化”の帰結なら、体系的に読み取ることができる、と。

そして彼が最も確実な指標として重視したのが、
人口の動きでした。「20歳の人は、40年後には必ず60歳になる」。

すでに起きた変化は取り消せず、しかも時間差をおいて、必ず表面化する。

抹茶ブームそのものは、誰にも読めませんでした。しかし、供給側はどうだったでしょうか。

茶畑を守ってきた農家さんの平均年齢は、とっくに70歳を超えています。新しい茶の木は、植えてから摘めるようになるまで5年かかります。担い手が細り、増産にも時間がかかる――つまり「供給が追いつかなくなる未来」は、ブームが来るずっと前から、すでに起こっていた未来だったのです。

見えていたはずなのに、多くの人は今の数字ばかりを見ていた。
だからこそ、いざ需要が跳ねたとき、価格が4倍にもなった。
いまの高騰は、突然やってきた「未来」ではありません。
何十年も前の”仕込み”と、”仕込まなかったこと”が生んだ、静かな「結果」なのです。

今の売上は、過去にまいた種の結果

これは、私たちの商売とまったく同じ構造だと思うのです。

今月の売上は、今月がんばったから生まれたものではありません。
過去の自分が、どこかで誰かにまいた種が、時間差で返ってきているだけ。
今こうしてお客様に恵まれているのも、何年も前の関わりや準備の”お陰様”にほかなりません。

だとすれば、問うべきはこうです。5年後に摘める畑を、私たちは今日、耕しているだろうか。

ブームを追いかけて慌てて動いても、茶の木がそうであるように、事業も一朝一夕には実りません。
大事なのは、流行が来てから動くことではなく、「すでに起こった未来」を静かに読み、
まだ誰も動いていないうちに畑を耕しておくことです。

抹茶の一杯の裏に、何十年もの仕込みと、それを支えた人への恩がある。
その事実に気づけたことが、今回いちばんの学びでした。

今月の数字に一喜一憂する前に、5年後に実る畑へ、今日ひと粒の種をまく。
私はそんな経営を続けていきたいと思います。

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