夫の手取りは減るのに、世帯のお金は増える?個人事業主の「専従者給与」活用術

2026/07/31 税務

なぜ家族への給料は「原則タダ働き扱い」になるのか

個人事業主が配偶者や子どもに仕事を手伝ってもらい、その対価としてお給料を払う。
ごく自然なことに思えますが、税金の世界では少し勝手が違います。

ポイントは「生計を一にする親族」という考え方です。
同じ財布で暮らしている家族(一緒に住んでいる、あるいは親の仕送りで暮らしている学生なども含みます)
への給与は、原則として経費に認められません。
家庭の中でお金が右から左へ動いただけ、と見なされてしまうからです。

つまり、何も手続きをしないまま家族に給料を払っていると、
「経費にならないのに支払いだけ発生している」という、いちばん損な状態になりかねません。
ここを知らずに給与計上している方が時々いらっしゃるので、最初に押さえておきたいポイントです。

経費にするための「専従者給与」3つのルール

この原則をくつがえし、家族への給与を経費にできるのが「専従者給与」という制度です。
利用するには、主に次の3つを満たす必要があります。

① 期限内に届け出る
その年の専従者給与を経費にしたい場合、3月15日までに税務署へ届け出を出します。
年の途中(例えば配偶者が退職して6月から手伝い始めた等)であれば、開始から2ヶ月以内が期限です。

② 支給額の「上限」を決めておく
役員報酬と違って、届け出では「月いくらまで」という上限を決めます。
届け出た上限の範囲内なら下げてもかまいませんが、上限を超えて払うことはできません。
「月10万円」で届けて15万円払う、といったことはNGです。

③ 15歳以上で、その事業にもっぱら従事している
年の半分(おおむね6ヶ月)以上、その事業に専念していることが条件です。
昼間は学校に通っている高校生や大学生は、原則として対象外と考えてよいでしょう。

手取りが逆転する仕組み

ここがこの制度のいちばん面白いところです。

仮に、利益400万円ほどの個人事業主(青色申告)が、
配偶者に毎月いくらかの専従者給与を支払うとします。
専従者給与を出すと、これまで使えていた配偶者控除は使えなくなります。
事業主本人の手取りだけを見ると、むしろ減ります。

それでも、配偶者側に給与という収入が新しく生まれるため、世帯全体で見ると手取りが増える
元動画の試算では、トータルでおよそ20万円ほどの差がつくケースが紹介されていました。
「本人の手取りは減るのに世帯は得をする」という、一見ふしぎな逆転が起きるわけです。

理由はシンプルで、所得税が「稼ぐほど税率が上がる」累進課税だから。
一人に所得を集中させるより、家族へ分散させたほうが、
世帯トータルの税率が下がりやすいのです。

青色と白色、どちらを選ぶべきか

実は白色申告にも、似た制度として「専従者控除」があります(配偶者なら最大86万円)。
届け出も不要で、確定申告書に書くだけ。手軽さは白色に軍配が上がります。

ただ、白色の場合は青色申告特別控除などのメリットが受けられないため、
トータルで見ると「給与を払っていないときとほとんど変わらない」水準にとどまりがちです。
帳簿づけの手間を惜しまないのであれば、節税の自由度も控除の手厚さも、
青色申告+専従者給与のほうが有利だと考えてよいでしょう。

注意したい「実態」と「社会保険」

最後に、私からの補足を2つ。

ひとつは、形だけの届け出では通用しないこと。
本当に事業を手伝っているという実態が必要です。
他に本業があって、そちらに半分以上の時間を割いている場合は認められません。

もうひとつは、社会保険料の存在
配偶者に給与を払えば、その方にも国民年金・国民健康保険などの負担が新たに発生します。
「世帯手取りが増える」と言うときは、この負担も差し引いたうえで判断することが大切です。

まとめ:所得は「分散」させるほど有利

個人事業主が合法的に使える「所得分散」の手段は、それほど多くありません。
専従者給与はその数少ない一つです。利益が大きい方ほど、家族への分散効果は高まります。

ご家族に事業を手伝ってもらっているなら、青色申告とセットでの活用を、
一度検討してみてはいかがでしょうか。
具体的な金額設定は、顧問税理士に相談しながら決めるのが安心です。

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